研究課題/領域番号 |
18K07393
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
今村 守一 宮崎大学, 医学部, 准教授 (10391442)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プリオン / 孤発性プリオン病 / 遺伝性プリオン病 / PMCA / 試験管内プリオン生成 / 補因子 / 異常プリオン蛋白質 |
研究実績の概要 |
本年度は、プリオン試験管内増幅法であるPMCAにおいて、組換えプリオン蛋白質(PrP)からプリオン様構造であるプロテアーゼ抵抗性のPrP(PrPres)へ効率的に変換する条件を検討した。複数あるPMCA装置の自発生成効率を比較した結果、PMCAを繰り返す、連続増幅を2回行うことでPrPresを100%の確率で生成する装置を選抜した。 これまでは野生型マウスPrPを元にしたバキュロウイルス由来PrP (Bac-PrP)のみを基質して用いてきた。本年度は、プリオン病予防治療薬のスクリーニング系の基質に適していると考えられる、ヒト遺伝性プリオン病遺伝子変異導入マウスPrP(P101L PrP)、ウシPrPおよびヒトPrPを作製し、PMCAの基質として用いた。さらに、自発生成のさらなる高効率化を目的として、Bac-PrPに加え、大腸菌で発現させたPrP (Ec-PrP)を基質として用いた。その結果、Ec-PrPはマウスPrP、ウシPrPにおいてBac-PrPよりPrPresの生成が早い傾向にあった。ヒトPrPについては今後比較する予定である。また、P101L Bac-PrPはPMCAによりPrPresに構造変換したが、野生型Bac-PrPresより分子量が大きく、野生型Bac-PrPresとは異なる生化学的性状を示した。 我々は、Bac-PrPを基質としたPMCAでシードに用いたプリオン株と同様の性状を維持した異常型プリオン蛋白質 (Bac-PrPSc)の増幅必要な補因子の同定に成功している(未発表)。今回それらの補因子のみで構成したPMCAによりシード非存在下でPrPresが生成するかを検討した。その結果、連続PMCAを行うことでBac-PrPresの生成が認められた。このことは、プリオンの複製に関わる補因子は自発生成も促すことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は当初の計画通りに概ね順調に進捗している。2018年度には、1)高効率なPrPSc様PrPの自発生成条件を確立し、2)自発生成に必要な補因子を同定した。さらに、3)1種類の遺伝性プリオン病原因遺伝子変異導入PrPやヒトPrP、ウシPrP等を作製し、PMCAを行なっている。これらの成果は1年目もしくは2年目前半に終える予定であった。その点では計画通りもしくは計画以上であるといえるが、本学では、プリオンの感染実験を行ったことがないため、動物実験の審査に時間がかかっており、未だPMCAで自発生成したPrPSc様PrPの接種試験を行えていない。その点を考慮し、概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進捗しているため、当初の計画通りに推進する。自発生成したPrPSc様PrPの感染性の有無や病理・病態等の性状を明らかにするには、バイオアッセイが必須である。接種から発症するまで最長2年程度かかる事があるため、マウスへの接種試験は可能な限り早急に行う。また、補因子の役割を明らかにするためには様々な実験手法を用いるため、これについても前倒しで2019年度から始めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスへの接種実験を行えなかったため、それにかかる費用を次年度に持ち越し、次年度から接種実験を開始する。
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