研究課題/領域番号 |
18K07395
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石井 さなえ 杏林大学, 保健学部, 准教授 (40435863)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嗅覚系神経回路 / 鼻腔炎症 / 脳微小環境 / 嗅球萎縮 |
研究実績の概要 |
C57BL/6Jマウス(8週令、オス)の片側鼻腔に生理食塩水もしくはリポ多糖を、週に3回投与し、3,6,10週間後に灌流固定した(salineマウス、LPSマウス、各n=4)。また、別の群のマウスは片側鼻腔閉鎖を行い、同じスケジュールで灌流固定した(NCマウス、各n=4)。これらのマウスを比較することにより、鼻腔炎症と嗅覚入力遮断が嗅球に及ぼす影響の違いを明らかにした。その結果、LPSマウス、NCマウスともにsalineマウスに比べて嗅球が萎縮したが、凍結切片を用いて嗅球の形態を解析すると、LPSマウスでは外側が、NCマウスでは内側が萎縮し、萎縮する層が異なることがわかった。また、LPSマウスでは嗅上皮に炎症が起り、嗅球ではグリア細胞が活性化し炎症性サイトカインが上昇したが、NCマウスではそのような変化は起こらなかった。 また、リポ多糖を10週間投与した後、無処置で2,6,10週飼育した群(LPS+NTマウス、各n=4)と、リポ多糖を10週間投与した後、鼻腔閉鎖して10週間飼育した群(LPS+NCマウス、各n=4)を比較した。LPS+NTマウスも、LPS+NCマウスも、鼻腔の炎症、嗅球の神経炎症は治まった。LPS+NTマウスでは、徐々に嗅球は萎縮から回復したが、LPS+NCマウスでは回復しなかった。このことから、鼻腔炎症による嗅球の萎縮からの回復には嗅覚入力が必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要なマウスモデルを予定通り作製し、灌流固定にて凍結ブロックを作製、あるいは、新鮮脳組織を凍結保存した。切片を作製し組織学的な解析を、新鮮脳組織からmRNAを抽出しqPCR解析を行った。得られた結果から、嗅球の萎縮、再生に関わると考えられるサイトカインの予想がつけられた。
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今後の研究の推進方策 |
①これまでの研究結果をまとめて論文を作成し発表する。 ②鼻腔炎症がマウス脳に組織学的な変化のみならず、行動学的な変化を誘発するかどうかを調べる。 ③鼻腔炎症による脳の組織学的変化、行動学的変化に雌雄差があるかどうかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で予想以上に実験が進んだため、前倒し請求をした。ほぼ使用したが、端数残ったため、次年度、物品費として使用する。
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