研究課題
成体雄マウスの両側鼻腔にリポ多糖(LPS)を週に3回、9週間繰り返し投与して慢性鼻腔炎症モデルを作製し、盲腸便を用いて腸内細菌叢の解析を行った。生食投与マウスのそれと比較した結果、慢性鼻腔炎症マウスのオスの腸内細菌叢では、門レベルでFirmicutes/Bacteroidetes比が低下し、属レベルでLactobacillusの減少とBacteroidesの増加が見られた。これらの変化はメスでは見られなかった。しかしながら、慢性鼻腔炎症マウスでは、雌雄とも体重の増加が抑制されていた。これらのことから、慢性鼻腔炎症は鼻粘膜の損傷のみならず全身性に影響し、脳腸連関の乱れを誘発することが明らかになった。本年度はこれらの結果を論文にまとめ、Scientific Reportsに掲載された。次に、鼻腔で起こる炎症反応が脳に伝達される機構を調べるために、鼻腔投与の急性期の脳の応答を調べた。生理食塩水もしくはLPSを両側鼻腔に投与した後、4,8,12,24,48,72時間後及び2週間後にマウスを固定し、凍結切片を作製、免疫染色を行った。その結果、LPS投与4時間以内に鼻腔で炎症反応が始まり、8-12時間後に嗅球においてケモカイン/サイトカインが増加し、12-48時間後に免疫細胞が活性化、24-48時間後にはミクログリアが活性化した。一連の応答は、2週間後には見られなくなった。これらの結果から、鼻腔炎症急性期において、免疫細胞、グリア細胞が脳内で一過性に細胞間相互作用を行うことが考えられた。さらに、末梢の炎症に対する脳の応答が、新生仔では成体マウスと異なる応答をする可能性を調べるため、生後6日目の新生仔の両側鼻腔に生理食塩水もしくはLPSを投与し、その急性期における鼻腔及び脳の応答を調べた。現在、成体マウスのそれとの違いを解明しているところである。
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