研究課題
アロネーシス(触覚誘発性かゆみ)は、衣服の擦れなど、通常ではかゆみを起こさない些細な刺激がかゆみを誘発する痒覚過敏現象を指す。これはアトピー性皮膚炎の患者にて問題となる「かゆみと掻破のスパイラル」の病態形成に強く関与しており、治療法の開発が切望されている。しかし、当該研究における現行のモデル動物では「起痒物質によるかゆみ」と「アロネーシス」が同時に発生するため、アロネーシスの分子細胞基盤のみ抽出して解析することが困難であった。しかし、この課題に対して我々は、消化管ペプチド・コレシストキニン8S (CCK8S) のマウス髄腔内投与は、アロネーシスのみを誘発することを見出してきた。本年度はCCK1R及びCCK2Rノックアウトマウスを用いて、アロネーシスの発症における各CCK受容体の寄与度の検証をおこなった。野生型、CCK1Rノックアウト、CCK2Rノックアウトマウスの髄腔内に1.0 nmol CCK8Sを投与し、0.16 g von Frey フィラメントによる無害な機械刺激を与え、その直後の掻破行動を1点として、アロネーシスアッセイを実施した。その結果、野生型マウスと比較して、CCK2RノックアウトマウスにおけるCCK8S誘発性アロネーシスの発生頻度は著明に低下することが判明した。その一方で、CCK1Rノックアウトマウスでは、このような発生頻度の低下は認められなかった。以上のことから、脊髄に発現しているCCK2Rは、アロネーシスの発症に強く関与していることが示唆された。
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