研究課題
医療用麻薬であるオピオイド鎮痛薬は、長期使用により耐性および副作用を惹起し、がん患者に安定的な鎮痛作用を求める上での大きな課題となっている。近年μ、δ、κからなるオピオイド受容体が二量体を形成し、μ/δ二量体化受容体選択的アゴニストであるML335はオピオイド耐性、副作用を引き起こしにくいことが報告され、二量体化受容体特異的アゴニスト製剤への開発の道が開かれた(PNAS, 110: 12072-, 2013)。しかしながら、これまでの報告ではML335はμ/δ受容体のパーシャルアゴニストにとどまり、また現時点で臨床開発は行われていない。申請者は、μ、δアゴニスト骨格に基づく新規概念に基づき合成された化合物を用いて、μ/δ二量体アゴニストのスクリーニングを行った。その結果、ML335に比較しμ受容体およびδ受容体への親和性は低く、μ/δ受容体に対してはML335の親和性を上回るμ/δ受容体選択性の化合物を82種類の化合物の中から数種見出すことができた。その手法として、μおよびδ受容体を1:1で共発現する細胞を構築し、また二量体化GPCRアッセイとして高度かつ迅速なCellKeyアッセイシステムを確立しμ、δ、μ/δ受容体発現細胞を用いてスクリーニングを行った。現在、作用活性の詳細な解析のため、これらの化合物を構造の違いに基づいて分類し、μ/δ二量体化受容体アゴニストの構造―活性相関をさらに詳細に解析する目的でrelated-compoundsを作製中である。
3: やや遅れている
μ/δ二量体化受容体アゴニストをスクリーニングし、候補化合物を得たが、そのrelated-compoundの合成に時間がかかっているため、合成終了後のnext stepとしての解析実験を待機させている状態である。
スクリーニングで見出したμ/δ二量体化受容体アゴニストのrelated-compoundが作製され次第、構造―活性相関に基づくデータをCellKeyアッセイにより取得する。結果に基づき効果的化合物を選択した後、その化合物を用い、鎮痛に対する動物実験を行う。並行して、有望なシーズの確保のため、3Dシミュレーション設計に基づき新たに合成を展開していく。最終的に得られた開発候補化合物を用いて、鎮痛薬製薬企業と臨床開発を行うための共同研究提案を行う。本研究では候補化合物の非臨床試験を完遂させ、First in human(FIH)試験を行う段階まで研究を進めるための基盤研究を行う。
平成30年度はrelated-compoundの作製に時間がかかっており化合物を待っている状況であるため、今後その作製の後に行うCellKey アッセイへの費用を次年度に繰越しすることとした。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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