研究課題/領域番号 |
18K07405
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
林 永美 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究員 (60421898)
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研究分担者 |
津田 玲生 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 室長 (30333355)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アミロイドβ / 神経変性 |
研究実績の概要 |
これまで、アルツハイマー病における神経変性誘導のメカニズムを明らかにするため、主にショウジョウバエモデルを用いて研究を行なってきた。先行研究ではAβのN末端が切断と環状化という修飾(pE化)を受けて産生されるpE-Aβに強い神経変性誘導活性を見出している。さらに、Aβをマウス内耳有毛細胞で発現させることにより、聴力低下としてAβの毒性を捉えるシステムの確立にも成功している。これら2つの解析系を用いて、Aβの神経変性誘導メカニズム解析を行なっている。昨年度は以下のような研究成果が得られている。 (1)先行研究から、Aβと比較してpE-Aβは強い神経変性誘導活性を示している。そのメカニズムとして、これまでの遺伝学的な解析から脂質代謝に関わる遺伝子変異が関わっている可能性を見出している。本年度は、脂質代謝異常と神経変性の関係を知るため、組織化学的な解析を実施した。具体的にはAβとpE-Aβそれぞれを光受容細胞特異的に発現させることにより、シナプス終末における変化を観察した。その結果、pE-Aβの発現によりシナプス終末の機能調節に関わるCSP(Cysteine String Protein)の抑制が観察された。 (2)昨年までの結果として、マウス内耳にAβを発現する新規マウスモデルの表現型に関して、イノシトールリン脂質(PI)代謝が関わっている可能性が得られていた。そこで、本年度は内耳有毛細胞におけるPI代謝を制御するメカニズムについて検討した。これまでの報告から、アルツハイマー病と難聴の両過程で働く可能性がある分子として代謝型グルタミン酸受容体7(mGluR7)を予想した。mGluR7の下流ではPI代謝に関与する因子が働いている可能性が示唆されていることから、Aβとの影響を観察しようとmGluR7のノックアウトマウス作製を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
技術的な問題点からmGluR7の遺伝子欠損変異体の作成に時間がかかった。具体的にはCrispr/Cas9による遺伝子編集技術を用いてmGluR7変異体を作製依頼していたが、mGluR7の親マウスが子孫に伝搬しにくく遺伝子改変マウスの作製に1年以上を費やしたため、当初の計画から大幅に遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
pE-Aβによる神経変性の誘導において脂質代謝とCSP抑制の関係が鍵を握っていると考えている。そこで、最終年度は脂質代謝がどのようにしてCSP抑制に導かれるのかを検討する。具体的にはSREBPおよび小胞体ストレス応答の関与を予想しており、これに関しては遺伝学的、生化学的な解析を実施することによりメカニズムを明らかにしたい。 マウスモデルに関しては内耳有毛細胞でAβを発現するバックグランドでmGluR7変異を導入することにより、表現型に与える影響を検討する。このとき、有毛細胞の変性についても詳しい解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初期から計画していた、トランスジェニックマウスの作成が難航して搬入が大幅に遅れたのに伴い、 その費用の支払いも遅くなった。そのため、作成マウスの機能解析などに使う予定だった助成金が次年度使用額として生じた。ですので、翌年度分と合わせて、当初の計画通り、機能解析とデータの纏めに当てるつもりです。
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