研究課題/領域番号 |
18K07406
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
常川 勝彦 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (30436307)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リポ蛋白リパーゼ / 骨格筋量 / 脂質代謝 / GPIHBP1 / 肝性リパーゼ |
研究実績の概要 |
生体内でのエネルギー利用において、摂取された栄養素である糖、脂質、蛋白のそれぞれの貯蔵と消費のバランスが重要である。この中で脂質は、脂肪細胞での貯蔵と骨格筋を中心とした種々の臓器での消費により調整されており、それぞれの組織から合成、分泌されるリポ蛋白リパーゼ(LPL)が重要である。主に血中の中性脂肪を分解するLPLの作用において、血管内皮のアンカー蛋白であるGPIHBP1が重要な役割を果たしている。このほか、血中の脂質代謝酵素として、IDLコレステロール分解によるLDLコレステロール合成に作用する肝性リパーゼ(HTGL)などが重要であり、私達はこれまでにヘパリン投与なしで血中LPL、HTGLおよびGPIHBP1濃度の測定試薬を開発し、動脈硬化との関連性を評価してきた。 本研究では、エネルギー代謝としてのこれらの蛋白の機能に着目し、骨格筋が多く、エネルギー消費の多いアスリートに対して、コンディション調整を行う上でのエネルギー消費と供給のバランスを適切に評価できるマーカーの開発と応用を目的としている。これまでに、骨格筋量の多いレスリング選手を主な対象として、極端な食事制限やトレーニング等の影響の少ない条件において、健常対照との血中濃度等の比較検討を進めてきた。この結果、血中LPL、GPIHBP1濃度は、それぞれ正の相関を持ち、血中中性脂肪濃度と負の相関を示していた。また、これらの濃度は対照と比較してレスリング選手で有意に高値を示していることが明らかとなった。これらの成果は、第65回日本臨床検査医学会(2018年11月16日東京)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋量の多いレスリング選手では、健常対照と比較して血中LPL、GPIHBP1濃度が有意に高値を示しており、脂質代謝を促進することでエネルギーを有効利用していることが示唆された。この研究成果は現在論文に投稿中であり、進捗は概ね良好と判断できる。さらなる研究として、レスリング選手のほかに長距離走選手などを対象として、試合に向けた負荷の強いトレーニングを行うことや、体重制限がエネルギー代謝に及ぼす影響を評価するため、LPLを中心とした脂質代謝マーカーの時間経過による変化などを評価していく予定である。 一方で、骨格筋量および筋力の低下に基づくサルコペニアが様々な疾患の予後に関与することが近年明らかとなっている。骨格筋と血中LPL、GPIHBP1との関連を明らかとすることは、サルコペニアによるエネルギー利用障害の原因解明にもつながることが期待される。最近では、サルコペニア診断のほか、科学論文においても精密な体組成計による詳細な骨格筋量の評価が求められており、これまでの成果とともに今後の研究を推進する上でInBody等の体組成計の利用が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進する上では、詳細な骨格筋量を評価できる体組成計の利用が必須であり、このために当初予算において計上していなかったInBodyの購入が必要と考えられた。しかし、当初の予算配分の中では単年度の予算でこれを購入することが困難であることより、2018年度予算の一部は2019年度に繰越し、この購入に当てる計画とした。 今後はInBodyを用いた骨格筋量および体脂肪量との血中LPL濃度との関連の検討のほか、血中GPIHBP1、HTGLなどの関連蛋白についても関連性の検討を進める。さらに、レスリング選手のほか、長距離走選手などの様々な運動様式のアスリートのコンディション調整の過程で、体組成の詳細な変化とそれに伴う脂質代謝の変化を解析し、LPLなどの関連蛋白のマーカーとしての有用性を検討することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨格筋量および筋力の低下に基づくサルコペニアが様々な疾患の予後に関与することが近年明らかとなっている。骨格筋と血中LPL、GPIHBP1との関連を明らかとすることは、サルコペニアによるエネルギー利用障害の原因解明にもつながることが期待される。一方で、最近ではサルコペニア診断のほか、科学論文においても精密な体組成計による詳細な骨格筋量の評価が求められており、これまでの成果とともに今後の研究を推進する上でInBody等の体組成計の利用が求められる。当初予算にはInBodyの購入予算は計上しておらず、また当初の配分の中では単年度の予算でこれを購入することが困難であることより、2018年度予算の一部は2019年度に繰越し、この購入に当てる計画とした。
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