研究課題
生体内でのエネルギー利用において、摂取された栄養素である糖、脂質、蛋白のそれぞれの貯蔵と消費のバランスが重要である。この中で脂質は、脂肪細胞での貯蔵と骨格筋を中心とした種々の臓器での消費により調整されており、それぞれの組織から合成、分泌されるリポ蛋白リパーゼ(LPL)が重要である。主に血中の中性脂肪を分解するLPLの作用において、血管内皮のアンカー蛋白であるGPIHBP1が重要な役割を果たしている。このほか、血中の脂質代謝酵素として、IDLコレステロール分解によるLDLコレステロール合成に作用する肝性リパーゼ(HTGL)などが重要であり、私達はこれまでにヘパリン投与なしで血中LPL、HTGLおよびGPIHBP1濃度の測定試薬を開発し、動脈硬化との関連性を評価してきた。本研究では、エネルギー代謝としてのこれらの蛋白の機能に着目し、骨格筋が多く、エネルギー消費の多いアスリートに対して、コンディション調整を行う上でのエネルギー消費と供給のバランスを適切に評価できるマーカーの開発と応用を目的としている。今年度、全身の詳細な体組成の測定が可能であるインピーダンス体組成計(InBody470)を導入し、骨格筋量と血中LPL濃度およびGPIHBP1等の濃度との関連を解析した。これまでに、骨格筋量の多いレスリング選手と健常対照との比較検討において、血中LPL、GPIHBP1濃度はレスリング選手で有意に高値を示し、それぞれ骨格筋量と正の相関、血中中性脂肪濃度と負の相関を示した。骨格筋量と血中LPLのみでなくGPIHBP1濃度との関連を初めて示したこの結果は、新たな脂質代謝メカニズムの解明に重要と考えられる。この成果は、Lipid in Health and Disease誌に今年度掲載された。
2: おおむね順調に進展している
本研究において、骨格筋量の多いレスリング選手では、健常対照と比較して血中LPL、GPIHBP1濃度が有意に高値を示しており、脂質代謝を促進することでエネルギーを有効利用していることが示唆された。骨格筋量と血中LPLのみでなくGPIHBP1濃度との関連を初めて示した成果は、新たな脂質代謝メカニズムの解明に重要と考えられる。この成果は、Lipid in Health and Disease誌に今年度掲載され、進捗は概ね良好と判断できる。また、健常対象者での解析により、血中LPLおよびGPIHBP1濃度は男性と比較して女性に有意に高値を示すことを明らかとし、論文作成中である。今後のさらなる研究として、骨格筋の量のみでなく質の違いと脂質代謝との違いを評価するため、瞬発力が必要で骨格筋量の多いレスリング選手のみでなく、骨格筋量よりも持久力が必要とされる長距離走選手について、トレーニング前後、試合前などでの血中LPL、GPIHBP1およびHTGL濃度の評価を進めている。さらに、脂質代謝のみならず、蛋白・アミノ酸代謝などの総合的な栄養素と骨格筋量および機能との関係性について解析を進めている。
さらなる研究として、骨格筋の量のみでなく質の違いと脂質代謝との違いを評価するため、瞬発力が必要で骨格筋量の多いレスリング選手のみでなく、骨格筋量よりも持久力が必要とされる長距離走選手について、トレーニング前後、試合前などでの血中LPL、GPIHBP1およびHTGL濃度の評価を進めている。さらに、脂質代謝のみならず、蛋白・アミノ酸代謝などの総合的な栄養素と骨格筋量および機能との関係性について解析を進めている。これらの解析を通して、トレーニングを継続しているアスリートに対して適切な時期のコンディション評価に有用なマーカーとしての血中LPL、HTGLおよびGPIHBP1濃度の意義を解明し、実際の応用を計画している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Lipids in Health and Disease
巻: 18 ページ: 84
10.1186/s12944-019-1014-7
Endocrinology, Diabetes & Metabolism
巻: 3 ページ: e00098
10.1002/edm2.98