研究課題
生体内のエネルギー代謝では、摂取された糖、脂質、蛋白の各栄養素の貯蔵と消費のバランスが重要である。脂質は、脂肪細胞での貯蔵と骨格筋等の臓器での消費により調整されており、それぞれの組織から合成、分泌されるリポ蛋白リパーゼ(LPL)、およびLPLのアンカー蛋白であるGPIHBP1が重要な役割を果たしている。このほか、血中の脂質代謝酵素として、IDL分解によるLDLコレステロール合成に作用する肝性リパーゼ(HTGL)などが重要であり、私達はこれまでにヘパリン投与なしで血中LPL、HTGLおよびGPIHBP1濃度の測定試薬を開発し、動脈硬化との関連性を評価してきた。本研究では、エネルギー代謝におけるこれら脂質代謝酵素の機能に着目し、骨格筋の多いアスリートに対して、コンディション調整を行う上でのエネルギー消費と供給のバランスを適切に評価できるマーカーの開発と応用を目的としている。研究期間を通し、全身の詳細な体組成の測定が可能であるインピーダンス体組成計(InBody470)を導入し、骨格筋量の多いレスリング選手と健常対照との比較検討を行ってきた。この結果、レスリング選手では血中LPL濃度のみでなく、GPIHBP1濃度も有意に高値を示し、それぞれ骨格筋量と正に相関、中性脂肪濃度と負の相関を示すことを明らかにし、成果を2019年LHAD誌に報告した。さらなる解析により、アミノ酸代謝において、骨格筋量の増加に伴い血中BCAA/チロシン比(BTR)が有意に減少することを明らかにし、エネルギー消費の多いアスリートにおけるアミノ酸不均衡の重要性について、成果を2021年BMC Sports Sci Med Rehabil.誌へ報告した。これらの研究を通して、骨格筋量と血中脂質およびアミノ酸濃度との関連の詳細が明らかとなり、エネルギー消費亢進状態におけるこれらの血中濃度の測定の有用性が示された。
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