研究課題/領域番号 |
18K07408
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西村 基 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (80400969)
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研究分担者 |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
田中 知明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50447299)
別府 美奈子 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (70623669) [辞退]
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90344994)
土田 祥央 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90410422)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 臨床検査 / 細菌検査 / メタゲノム / メチル化解析 |
研究実績の概要 |
細菌検査は質量分析法の導入など、臨床検査分野の中でももっとも技術革新の進んでいる 分野である。しかしながら質量分析法の活躍は、現在のところ主に分離培養された検体 に限られている。申請者らはこれまで、髄液検体(Clin Chim Acta. 2014 Aug 5;435:59-61.)、尿検体、血液培養検体といった臨床検体より直接、または分離培養を経ずに質量分析を行う研究を行ったが、数々の強力なメリットの一方、培養困難菌、混合感染の検出、菌種の同定に留まり株の鑑定は困難であるなど、多少の弱点はやはりあった。 近年はメタゲノムといわれる細菌を網羅的、分子生物学的に検出する手法が次世代シーケンサーの普及に伴って研究的に広く行われるようになっている。メタゲノム的手法を臨床検査に採用する利点として培養に依存しない事、単菌種というより複数菌の検出をそもそも目的とした手法であるといった、質量分析法を補完しうる点が挙げられる。 申請者らは16SrRNA遺伝子(16SrDNA)解析によるメタゲノム手法を臨床検体に応用することを構想し、基礎検討を行い、「メタゲノム的手法の導入による、さらなる意義を持つ臨床細菌検査」の開発に本科研費助成を受け、平成30年度より着手した。 16SrDNA解析の細菌検査への導入は、質量分析によるルーチン検査の弱点を広く補いうるものではあり、感染源不明の症例で感染門戸の推定を行う事が可能であるなど確かに新意義を有するものではあった。しかしながら共通する問題点として「菌種の同定に留まり株の鑑定は困難である」点は単に16SrDNA解析を導入するだけでは解決していない。この開発においては、DNAメチル化解析を組み合わせることで株情報を追加的に取得することを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
16SrDNA解析の細菌検査への導入は、質量分析によるルーチン検査の弱点を広く補いうるものではあり、感染源不明の症例で感染門戸の推定を行う事が可能であるなど確かに新意義を有するものではあった。例えば千葉大医学部附属病院においての臨床所見からは不明熱の診断で、通常の血液培養検査ではKlebsiella pneumoniae (肺炎桿菌)のみが検出された症例では、この血液培養検体につき分離培養を行わず直接、DNAを抽出し16SrDNAメタゲノム解析を行った所、Klebsiella pneumoniaeの他にKlebsiella variicola、Serratia marcescens、E.coliといった全て腸内細菌科に属し通常、腸内から分離される菌DNAが検出された。よって本例においてはメタゲノム解析から感染門戸は消化器である可能性が高いと推定できた。 さらに研究実績の概要及び推進方策にある通り、細菌由来のDNAについてメチル化解析を行ってそれをメタゲノム解析に組み合わせ得るかについて検討を初年度では開始している。予備検討において、大腸菌K12株のような極めて実験用に標準化された株では、由来DNAによってはメチル化解析は可能であった。しかしながら克服すべき課題もあり、それは微量のDNAからのメタゲノム解析を念頭に、PCR増幅をメチル化解析前に組み込もうとすると、ノイズ的な増幅がしばしばコンタミネーションしてしまう点である。この点は、最終的なゴールを高精度な解析に置くのであれば、大きな問題になりうる点である。
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今後の研究の推進方策 |
PCR増幅をメチル化解析前に組み込もうとすると、ノイズ的な増幅がコンタミネーションしてしまう点についてはいくつかの方策が考えられる。 メチル化解析の対象とするDNA量を増やして、PCR増幅を回避するというのは根本的な解決手法であるが、メタゲノムがここまで急速に発展しているのはPCR増幅により比較的少量なDNAで解析がスタートできるという事が理由の一つであるため、できればPCR増幅は本研究開発においても採用したいのが正直なところである。 よって、まずはPCR条件や増幅領域の再設定、さらにはサンプルのpreparation工程の見直しによりノイズ増幅の混入を極限できないか既に予備的な検討に着手している。結果、極限とまでは言いにくいが、ノイズ増幅の大幅な低減が可能な条件データが得られつつあり、引き続き極限と呼べるレベルに達するまで条件検討を続けていく予定である。 また、解析対象とする菌株・検体について、実験用に標準化された大腸菌K12株だけではなく、一般的な臨床分離株(クレブシエラなど)の蓄積を始めており、単に各菌種を集めるのではなく、同一菌種でもその性状から株は異なると判定できるサンプルを収集している。菌DNAのメチル化解析において取るべき手段が定まれば、これら菌株より抽出したDNAについて順次解析を進めていく予定である。
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