研究課題
免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)は、腫瘍特異抗原を認識している筈である抗原特異的細胞障害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte, CTL)の機能を増強させることを目的として開発された薬剤である。しかし、抗原特異的細胞障害性T細胞そのものを個別に同定し、その機能について詳細に把握する手段は十分には開発されていない。治療薬開発と需要増大の速度に検査技術の開発が併走していないのが現状である。症例毎の抗原に対するCTLがどの程度誘導されているのか、高額な免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療効果が期待できる例を治療前にある程度予測することはできるのか、という課題に対し、腫瘍免疫検査学の視点から、抗原特異的CTLを数値化し経時的に測定し機能測定を行う方法の開発と、免疫増強能が報告されている薬剤の細胞性免疫に対する効果測定法の開発 を最終目標としている。2018年度は、混合リンパ球ペプチド培養法の培養条件(培養日数やサイトカインカクテルの設定)を洗練させ、効率的にHL-A*24:02陽性造血器腫瘍性疾患におけるWT1-CTLの検出方法を検討した。その結果、末梢血のみならず、骨髄中に存在するリンパ球(固形腫瘍におけるTILに相当すると考える)中のCTL検出も行うことが可能であること、CTLの存在が症例ごとに異なること を確認した。今後の研究期間では、このCTLの増幅技術について既に抗原提示能について機能を解析し報告している細胞株などを用いて検討し、CTLの詳細な解析やMK細胞との相互関係などを検討することを計画している。
2: おおむね順調に進展している
CTLの増幅に関しては、TLRを刺激したfeeder細胞を用いる予備的実験において、可能であることを確認している。これら増幅したCTLの細胞障害活性の測定に関して、数種類の方法で確認を続ける。
2019年度、2020年度には、このCTLをさらに増幅する技術について検討し、CTLの機能解析やMK細胞との相互関係などを検討することを予定している。
当初予定していたサイトカインや抗体について、効率的に使用することが可能であった。次年度の研究に用いる抗体や試薬は高額となる可能性が高く、これを念頭において、計画的に繰り越した。
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