本研究の目的はサルコペニアにおける神経筋接合部変化に着目し、糖尿病が神経筋接合部変化をもたらしサルコペニアを促進するという仮説の元に、糖尿病を改善することで神経筋接合部変化の改善と共にサルコペニア予防に働くことを確認することである。そのためまずは動物モデルとして雄性Wisterラット(12週齢)にストレプトゾトシン(STZ)を投与し、高血糖モデル作成を行った。そのうえで16週齢から血糖コントロール目的にSGLT2阻害剤を投与する治療群を作成した。こうして正常コントロール、糖尿病モデル群、薬剤投与群、糖尿病かつ薬剤投与群の4群を作成し24週齢での採血、下肢筋の採取を行った。動物モデルで得られた血清サンプルを用いて血中C terminal Agrin Fragment(CAF)の濃度測定を行った。また下肢筋における神経筋接合部位の免疫組織染色を行うため、まずサンプルの固定や免疫組織染色を行う上での条件をいくつか設定し至適条件を確定していく作業を行った。 当院に受診された高齢糖尿病患者にて過去に採取されたサンプルでは、CAFはサルコペニアおよび糖尿病の患者で高い傾向が示されることが判明したが、数が少なく、また健常者においてもばらつきを認めたため、ヒトの場合被験者におけるデータ(体重、体組成、身体機能(筋力、歩行速度、バランス機能))との対応の検討が必要と考えられた。 こうして動物モデルおよびヒトでの臨床研究を平行して行う予定であったが、何度か実験中断を余儀なくされ期限を迎えたため最終的な結論や考察が十分行えていないという結果になっている。
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