研究課題/領域番号 |
18K07413
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹屋 泰 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (70590339)
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研究分担者 |
武田 朱公 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (50784708)
里 直行 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 部長 (70372612)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 認知症 / 神経病理 |
研究実績の概要 |
先進国における高齢者の認知症発症率が低下しているという報告が相次いでいる。これらの報告によれば、教育水準の向上や心血管病の危険因子の有病率の低下などが寄与しているとしながらも、これらすべてを考慮しても認知症の減少を完全には説明できないと結論付けている。 また、大阪大学医学部附属病院老年・総合内科では2016年9月より、脳脊髄液バイオマーカー(Aβ、タウ、リン酸化タウ)の検査を含んだ3泊4日の物忘れ検査入院を開始し、神経病理学的背景と認知症の表現型や多くの臨床パラメータを悉皆調査している。これらの症例の中には、AD(Alzheimer's Disease)病理が高度であるにも関わらず認知機能が保たれていたり、あるいはAD病理が高度であるにも関わらず脳萎縮が軽微である症例を経験することが少なくない。また、脳において観察される神経病理学的変化と認知症の発症や重症度は、必ずしも相関しないという報告が数多く見られ、実際に剖検脳を対象とした研究でも、神経病理学的所見からADと判断された個体のうち、4分の1は生前に認知症症状を有していなかったという報告もある(Neuropathology Group. Lancet 2001;357:169-175)。 以上のことなどから、、認知症やADの進行過程には、病理学的背景に加え、様々な促進因子や防御因子が経過に影響与えていることについては疑いがなく、申請者らはこれらの事例に着目し、ADの認知機能に影響を与える関連因子である未知の物質X、あるいは要因Xの存在を仮定した。本研究において、これらを調査していくことで、ADにおけるAD病理と認知機能低下の関連因子を整理し、より適切な介入方法を導くことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床データの利用に関しては、すでに本学の臨床研究倫理審査委員会の承認は得られており(承認番号 15560-2)、ただちに症例の登録を行った。また、安定した症例数を確保するために、大阪府北摂地区を中心とした近隣の医師に対して、定期的に葉書で情報を提供し、病診連携の会を行い、ホームページの充実を図った。さらに、入院患者の増加に伴い、非常勤の技術補佐員を雇用し、最大週4例に脳脊髄検査目的の入院を行う体制を整えた。 その結果、2019年3月までに165名を登録することができた。現在までの患者背景は、平均年齢75.0±8.5歳、男性57名、平均MMSE24.2±5.0点、平均ADAS11.7±5.7点、平均Aβ42 1005.0±455.6pg/ml、平均P-tau 44.6±16.9pg/mlであった。また、ADの神経学的病理診断をP-tau/Aβ42>0.087とした場合の、MMSEを目的変数とした多重ロジスティック解析の結果、AD病理群(N=77)においてはAβ42と正の相関を認め、非AD病理群(N=88)においては年齢と負の相関を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、登録患者を上乗せし、ADにおけるAD病理と認知機能低下の関連因子を整理し、より適切な介入方法を導くことを目指す。
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