研究課題/領域番号 |
18K07415
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
櫻井 明子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70707900)
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研究分担者 |
安部 秀斉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (60399342)
冨永 辰也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (80425446)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ポドサイト / バイオマーカー / 糖尿病性腎症 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)は全世界において拡大を続けている。中でも重症化するCKDの主たる原因は糖尿病性腎症であり、糖尿病性腎症によって新規に透析導入となる患者数は最も多い。現行の治療法では、腎不全への進展をわずかに遅延させるのみであり、他のCKDの原因と比較しても、予後は極めて不良である。また、診断の面では、アルブミン尿は腎症特異的でなく、糖尿病を合併する他の腎障害との鑑別は困難な状況にある。そのため、腎症発症・進行の分子レベルでの病態を明らかにし、診断法を明確なものとし、腎症に特異性の高く、有効な治療法を開発することは急務である。本研究では、糖尿病性腎症の不良な腎予後の要因でもあるpodocyte lossが不可逆的な原因であることに着目し、糖尿病における、ポドサイトの細胞恒常性の破綻がもたらされる機構を、ポドサイトの形質を制御する分子を中心に解析を進める。糖尿病による、ポドサイトの恒常性や形質の変化を経時的に解析することで、ポドサイトに特異的に発現する分子群の腎症における分子病態を統合的に理解し、腎症の病態・病期ごとに特異的な分子を抽出し、新たな診断のためのバイオマーカーの樹立と新規分子標的治療の探索を行う。バイオマーカーの樹立と新規標的分子の同定後、腎臓病の分子病態把握、治療の奏功性の評価、透析にいたる予後予測等の評価を行う。 糖尿病性腎症の特徴である糸球体硬化におけるポドサイト特異的分子群の制御機構の解明のためヒト培養不死化ポドサイトに発現しているポドサイト特異的遺伝子群(WT1,nephrin, podocin, CD2AP, podocalyxinなど)の解析を行った。ヒト培養不死化ポドサイトの細胞膜上に発現しているCXC Chemokine Receptorに着目し尿中新規バイオマーカーとして有用か解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病性腎症の病理学的特徴である糸球体硬化におけるポドサイト特異的分子群の制御機構の解明のためヒト培養不死化ポドサイトに発現しているポドサイト特異的遺伝子群(WT1,nephrin, podocin, CD2AP, podocalyxinなど)の確認を行った。ヒト培養不死化ポドサイトの免疫組織化学染色、RT-PCR、Realtime-PCRの結果から、ヒト培養不死化ポドサイトの細胞膜上に発現しているCXC Chemokine Receptorに着目し、ヒト尿中新規バイオマーカーとして有用か解析している。徳島大学病院倫理委員会で承認され、同意書の得られた、健常者10名ならびに徳島大学病院で腎生検を実施し病理診断の確定した患者尿と患者組織、数十検体について検討しており、尿中エクソソーム抽出法と尿量については、使用キット・尿量の条件を確定した。健常者ならびに患者検体から尿中エクソソーム由来RNAと尿沈渣内脱落細胞由来RNAを抽出し、RT-PCR、Realtime-PCRを実施しCXC Chemokine Receptor4(CXCR4)とCXC Chemokine Receptor7(CXCR7)の遺伝子発現について解析中である。患者腎生検組織の免疫組織化学染色において、ヒト腎臓組織にCXCR4、CXCR7のタンパク質が発現していることを確認した。尿中CXCR4、CXCR7タンパク質の発現についてはWestern-blottingによる解析を実施している。また、ヒト培養不死化ポドサイトを用いて、高血糖条件下でのCXCR4、CXCR7遺伝子発現量とタンパク質発現量の変化を確認中である。さらに、腎生検病理診断におけるCXCR4、CXCR7発現量を疾患別に検討するため、微小変化型ネフローゼ症候群、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜性腎症、糖尿病性腎症の4疾患患者の臨床データをまとめ解析中である。また、糖尿病性腎症モデルマウスを用いてポドサイト特異的分子群の発現解析のために、経時的にアルブミン尿・血圧・体重・血糖等の測定と、後のバイオマーカー解析のために用いる血清および尿を採取している。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病における分子シグナルとポドサイト特異的分子群の制御機構の解明のためにヒト培養不死化ポドサイトを用いて、ポドサイト特異的に発現する分子群とCXC Chemokine Receptor4(CXCR4)とCXC Chemokine Receptor7(CXCR7)の分子間相互作用の網羅的な解析を行う。また、糖尿病の進展とともに発現量の変化することを確認済みのポドサイト特異的分子WT1と同調した発現変化を呈する遺伝子群を網羅的に同定する。CXCR4、CXCR7とこれらポドサイト特異的遺伝子群の統合解析より、早期より病態へ関与している可能性の高い候補遺伝子に関して、ポドサイトにおけるタンパク質の発現の変化、細胞内での局在の変化を高血糖および正常血糖の両条件下で免疫細胞染色により確認し、Western blot法もしくは定量PCR法で有意性の評価を行う。In vitroで候補になった分子については、徳島大学病院倫理委員会で承認され、同意書の得られた、健常者10名ならびに徳島大学病院で腎生検を実施し病理診断の確定した患者尿数十検体中のエクソソーム由来RNAと尿沈渣由来RNAの解析を行う。また、腎生検実施患者の腎臓組織の免疫組織化学染色を実施し候補分子のタンパク質発現について確認を行う。mRNA発現、免疫組織学的解析によるタンパク質発現を詳細に調べ、糖尿病におけるポドサイト障害の発症・進展に影響を与える分子を明白にし、annotationの確定した新規標的バイオマーカーを同定する。糖尿病患者の新規尿中ポドサイトマーカー測定のために、既にバンク化されている腎組織および尿サンプルを用いて、各分子の患者腎組織中のポドサイト内発現量との相関関係を解析する。臨床情報、治療への反応性を調査し、病態特異的なバイオマーカーを選定する。
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