慢性腎臓病(CKD)は全世界において拡大を続けている。糖尿病性腎症によって新規に透析導入となる患者数は最も多い。現行の治療法では、腎不全への進展をわずかに遅延させるのみであり、予後は極めて不良である。また、診断の面では、アルブミン尿は腎症特異的でなく、糖尿病を合併する他の腎障害との鑑別は困難な状況にある。そのため、診断法を明確なものとし、腎症に特異性の高く、有効な治療法を開発することは急務である。本研究では、糖尿病性腎症の不良な腎予後の要因でもあるpodocyte lossが不可逆的な原因であることに着目し、糖尿病における、ポドサイトの細胞恒常性の破綻がもたらされる機構を、ポドサイトの形質を制御する分子を中心に解析を進める。糖尿病による、ポドサイトの恒常性や形質の変化を経時的に解析することで、ポドサイト特異的分子群の腎症における分子病態を統合的に理解し、新たな診断のためのバイオマーカーの樹立と新規分子標的治療の探索を行う。バイオマーカーの樹立と新規標的分子の同定後、腎臓病の分子病態把握、治療の奏功性の評価、透析にいたる予後予測等の評価を行う。 ヒト培養不死化ポドサイトの免疫組織化学染色、RT-PCR、Realtime-PCRの結果から、ヒト培養不死化ポドサイトの細胞膜上に発現しているCXC Chemokine Receptorに着目し、ヒト尿中新規バイオマーカーとして有用か解析を行った。徳島大学病院医学系研究倫理審査委員会で承認され、同意書の得られた、健常者ならびに患者検体から尿沈渣内脱落細胞由来RNAを抽出し、RT-PCR、Realtime-PCRを実施、CXC Chemokine Receptorの遺伝子発現について解析中を行った。また、ヒト培養不死化ポドサイトを用いて、高血糖条件下でのCXC Chemokine Receptor遺伝子発現量に変化があるか検討した。
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