研究実績の概要 |
播種性血管内凝固症候群(DIC)では、基礎疾患を背景に過凝固状態が惹起され、全身の細小血管内に微小血栓が形成される結果、循環不全による多臓器障害が 出現する。これまでの研究で、核内蛋白のヒストンやHMGB1がDICの出現に関与していることが判っている。 造血器腫瘍を基礎疾患とする場合でも、寛解導入療法として抗がん剤による化学療法が施行されると、腫瘍崩壊が出現し、腫瘍崩壊症候群を引き起こしたり、DICの増悪が認められることは日常臨床で経験する。 そこでまず我々は、造血器腫瘍における化学療法時にDICが出現した際、血清中のヒストンやHMGB1が病態の惹起と完成に重要な役割を果たしていると考え、凝固マーカー(PT-INR, FBG, FDP, TAT, AT, SFなど)とヒストン並びにHMGB1の値を測定し、相関を検討することにした。対象は、当科に入院し化学療法を施行された白血病や悪性リンパ腫、それに多発性骨髄腫などの造血器腫瘍患者で、化学療法の前後、および入院治療経過中、適宜、末梢血採決で検体を採取した。 また、移植治療における重篤な合併症である肝中心静脈閉塞症(SOS/VOD)は、内皮障害よりか凝固状態となり、多臓器不全から死の転帰をとることも稀ではな いが、こうした凝固異常の病態においていもヒストンやHMGB1が診断早期のマーカーと成り得る可能性について研究を進める。
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