自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の約1割はクームス試験が陰性を示し、クームス試験感度以下の赤血球結合IgGが主な原因と言われている。近年普及してきているカラム法クームス試験は試験管法に比べ感度が高く、クームス陰性AIHAカットオフ値相当の赤血球結合IgGも検出可能といわれているが、当ラボへの検査依頼症例では依然クームス陰性AIHAが検出されている。本研究では、カラム法クームス試験陰性AIHAの診断法や臨床的特徴を明らかにすることを目的としている。 2015年から2019年に我々の研究室へ検査依頼のあった637症例中、検査から1年後に行った主治医へのアンケート調査へ回答のあった438例から依頼医療機関でのクームス試験が陽性であった26例とデータセットに不備が認められ30例を除外した残りの382例を対象として、検査分類と臨床診断についての検討を行った。クームス試験陰性の溶血性貧血症例に対して、我々の提唱する検査セットを治療前の検体で行うと、クームス陰性AIHA診断に関する感度は97%で特異度は84%であった。クームス陰性AIHAは検査上、6種類(試験管DAT陰性AIHA、ダブルDAT陰性AIHA、低親和性IgG型AIHA、IgA/IgM型AIHA、低親和性IgM型AIHA、臨床的に診断されたクームス陰性AIHA)に分類することができ、主要な4つのDAT陰性AIHAのサブグループ(試験管DAT陰性AIHA、低親和性IgG型AIHA、ダブルDAT陰性AIHA、「臨床的に診断されたクームス陰性AIHA」)の特発性症例について臨床的特徴を明らかにした。以上の結果について、2021年度に英文誌へ発表した。 AIHAに関する2編の原著論文の著者、1編の原著論文の共著者となった。3編のAIHAに関連した総説を執筆した。2冊の書籍の共同執筆者となった。
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