研究課題/領域番号 |
18K07422
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研究機関 | 人間総合科学大学 |
研究代表者 |
鍵谷 方子 人間総合科学大学, 人間科学部, 教授 (50291133)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ストレス / 交感神経 / DHEA-S / 副腎皮質 / 卵巣 |
研究実績の概要 |
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびその硫酸抱合体(DHEA-S)は,ヒトでは主に副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンで,抗ストレスホルモンとしての働きや,高齢者における血中濃度低下が認知症やサルコペニアなどの老年症候群と関連することなどが注目されている.本研究は,ストレスがDHEA-S分泌に及ぼす影響とその自律神経性機序を解明することを目的としている. ストレス時の分泌変化を調べる前段階として,まず麻酔したラットを用い,人工呼吸下で生理的状態を安定に維持した状態で断続的に採血を行い,安定に末梢血中DHEA-S濃度を経時的に測定する方法の確立を目指した.その結果,ラットの末梢血中DHEA-S濃度はヒトとは異なり低濃度であることが分かった.さらに,副腎静脈血を採取してDHEA-Sの前駆物質であるDHEA濃度を測定した場合においても低濃度であった.DHEAは,ステロイドホルモンの1つであり性腺では副腎皮質と同一の経路を経て合成され,さらに,DHEAはテストステロンやエストラジオールなどの性ホルモン合成の材料となる.今回先行研究の調査の結果,ラットなどのげっ歯類においてはヒトと異なり,副腎皮質よりも性腺でDHEA合成が多いことが判明した.そこで,次に性腺から分泌されるDHEAあるいはDHEA-Sに対するストレスの影響とその機序を調べることにした.実験は,成熟雌ラットを用い,麻酔下,人工呼吸下で生理的に安定な状態を維持し,安静時の卵巣静脈血を採取しDHEAとDHEA-S濃度を調べる.さらに,DHEAおよびDHEA-S分泌が卵巣交感神経電気刺激よる活動亢進時に変化するかどうかを調べる実験に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,抗ストレスホルモンとしてや,性ホルモン源として注目されているDHEA-S分泌が,ストレスによって影響をうける機序を解明すること,特に交感神経系の関与を明らかにすることを目的としている.具体的には,皮膚侵害刺激による身体的ストレスが副腎皮質からのDHEA-S分泌に及ぼす影響を明らかにし,その影響に対する交感神経系調節系の関与を調べる計画であった.この目的のために,初年度には,麻酔下,人工呼吸下で生理的状態を安定に維持したラットを用いて,循環血漿中DHEA-S濃度を経時的に安定に測定する方法の確立を行った.本年度は,その方法を用いて循環血漿中DHEA-S濃度の解析を詳細に行ったところ,ラットではヒトとは異なり低濃度であることが分かった.さらに副腎静脈血中のDHEA濃度の評価も行い低濃度であることを確認した.今回あらたに文献調査を行ったところ,ラットでは副腎皮質よりも性腺でDHEA合成が多いことが分かった.合成量が多い方が,ストレスによる影響を観察するのに有利と考え,卵巣からのDHEAあるいはDHEA-S分泌に及ぼすストレスの影響とその機序および交感神経系の関与について調べることとした.新型コロナウィルス感染症伝播の影響により,実験が行なえない状況となった.現在,実験を再開することができる状況となったため,採取したサンプルからのDHEAまたはDHEA-S濃度測定や解析,および追加実験等は今後行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
ストレスがDHEA-S分泌に及ぼす影響の解明とその自律神経性機序の解明を目的とする本研究において,2020年度は,ラットではDHEAが副腎皮質より多く合成されている卵巣のDHEAおよびDHEA-S分泌に着目して,研究計画を推進する.合成経路は副腎皮質と類似している卵巣でストレスによる影響および自律神経性機序を解明することは,ヒトにおける副腎皮質のDHEA分泌およびDHEA-S分泌へのストレスの影響の解明につながることが期待できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染伝播の影響により研究が延期になったため,納品の遅れが生じたこと,また,ホルモン測定にかかる費用を使用できなかったことが理由である.現在,研究が再開し,納品が順次されており,また,測定実験の方も進んでいるため,早い時期に繰り越した分は使用し終わる計画である.
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