研究実績の概要 |
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびその硫酸抱合体(DHEA-S)は,副腎皮質や性腺でコレステロールからプレグネノロンを経て合成される.ヒトにおいて、性ホルモン源としての働きや抗ストレスホルモンとしての働き、高齢者における血中濃度低下が認知症やサルコペニアなどの老年症候群と関連することなどが注目されている。前年度までにラットではヒトと異なりDHEAおよびDHEA-Sの血中濃度がごく低濃度であることが判明した。そこで、ストレスが自律神経を介してDHEA分泌に及ぼす影響を調べる本研究において、本年度は、ラットとヒトにおいて共通にDHEA合成経路の上流で合成されるプレグネノロンの分泌に対する交感神経の影響を検討した。プレグネノロンは副腎皮質や性腺でDHEAだけでなく、コルチコステロンやアルドステロン、性ホルモン合成経路の上流にある。プレグネノロン分泌調節に対する交感神経の関与を調べることは、ストレス時の種々のステロイドホルモン合成・分泌に及ぼす交感神経性調節の解明に繋がると考えた。 実験は、Wistar系成熟雄ラットを用い、麻酔下、人工呼吸下で生理的状態を安定に維持して行った。採血は副腎静脈に挿入したカテーテルを介し間欠的に行った。脱血の影響を少なくするために、非採血時は副腎静脈血を大腿静脈のカテーテルを介して全身循環に還流した。血漿サンプル中のプレグネノロン濃度を酵素免疫測定法により測定した。真の分泌変化を評価するために、副腎プレグネノロン分泌速度を算出した。分離した大内臓神経の末梢端を5分間電気刺激(10V, 20Hz)すると全身動脈圧が上昇し副腎静脈血漿流量が減少した。副腎からのプレグネノロン分泌速度は刺激前と比較して減少した。これらの結果から、副腎支配交感神経は、副腎皮質においてコレステロールからのプレグネノロン合成を抑制する可能性が考えられた。
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