研究課題/領域番号 |
18K07423
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
遠藤 仁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 専任講師(学部内) (50398608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サルコペニア / プロレニン受容体 / Wntシグナル / YAPシグナル / オートファジー / 老化 |
研究実績の概要 |
老化に伴い骨格筋で上昇するプロレニン受容体(PRR)を全身に高発現させたPRRトランスジェニック(Tg)マウスの解析を行なった。骨格筋、特に速筋に強く萎縮を認めたが、心臓、肝臓、腎臓については特に機能的な異常を認めなかった。横隔膜の萎縮も著明であったため、死因として呼吸不全の存在が示唆された。萎縮した骨格筋では、炎症・線維化・老化のマーカーがそれぞれ上昇しており、速筋優位の筋萎縮と合わせて、サルコペニアの表現型を呈していると考えられた。 筋萎縮と関連が深い蛋白生合成系および分解系の機構を解析した。合成系のmTORは活性化しており、分解系のUPSは抑制されていることから、これらは萎縮による代償的な反応を見ていると考えられた。オートファジーについてはp62の上昇とLC3 conversionの障害がみられ、オートファジーの過程が進まない機能障害を呈していることが確認された。 また、本マウスの萎縮した骨格筋(速筋)ではWnt/βカテニンシグナルが活性化していた。Wntシグナルの阻害薬であるDKK1で筋萎縮が改善したため、PRR Tgマウスの骨格筋萎縮にWntシグナルが関与することが分かった。 カルジオトキシンを用いて骨格筋細胞の壊死を起こし一斉に筋再生を誘発したところ、PRR Tgマウスではすみやかに再生筋細胞が出現したが、筋芽細胞の細胞融合が進まず、筋線維の成熟・飛行が不十分であった。筋障害後30日前後では、速筋線維も少なからず散見されるが、90日では障害前と同様の速筋線維優位の筋萎縮を呈していた。以上から、PRR Tgマウスでは細胞融合の障害による筋再生不良が起きており、筋萎縮の機序の一つと考えられた。 さらに、PRR TGマウスはYAPシグナルの活性化も確認されている。Wntとも関連の深いシグナル分子であり、今後その解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、加齢性骨格筋萎縮モデル PRR Tgマウスの表現型解析を進めている。研究計画書で提案した①組織解析、②萎縮の原因検索、④筋傷害後の再生能評価については、上記のように、新たな知見を集積しており、これまで明らかにされていないPRRを中心とするサルコペニア発症機序の基盤メカニズムに迫れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、まず細胞での実験を樹立する。筋細胞の実験系としては、C2C12筋芽細胞が存在するため、レトロウィルスでPRRを高発現し安定発現細胞株を作成する。そのうえで、分化誘導を行ない筋管形成能を評価する。 また、YAPシグナルの阻害薬も使い、本マウスの骨格筋萎縮にとってYAPシグナルの活性化が寄与しているか評価する。 PRR-Wnt-YAPシグナル経路が実際、高齢マウスにおいてもサルコペニア発症に重要な役割を担っているのか、それぞれの阻害薬を用いて実証する。PRRについてはWnt受容体との結合を抑制する中和抗体を、WntシグナルについてはDKK1を、YAPシグナルについてはVerteporfinを用いて、筋萎縮の改善がみられるか調べる。 さらに、AAVによる遺伝子導入システムを用いて骨格筋選択的発現を実現し、骨格筋におけるPRR発現が直接萎縮を誘導しているか確認する。また遺伝子サイレンシングもAAVで行ない、長期の治療効果が期待できるか評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の使用が足りなかったため次年度使用額がわずかに生じた。翌年度分の助成金と合わせて、主に研究物品費として使用する予定である。
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