研究課題
骨髄中の白血病細胞は、自ら作り上げた低栄養、低酸素状態の「白血病微小環境」の中で、独特のエネルギー代謝や低酸素環境への適応力を獲得する。微小環境中における白血病細胞のエネルギー制御について理解することは、白血病の再発防止に必須である。本研究では、白血病細胞の生存力の軸となる酸化的リン酸化の制御機構を解明することを目的とする。当該年度の研究では、急性骨髄性細胞における酸化的リン酸化阻害剤IACS-010759と標準的治療薬であるシタラビンの相加的アポトーシス誘導効果について検討した。その結果、骨髄間質細胞との共培養条件の下では、骨髄間質細胞から白血病細胞へのミトコンドリア移動の増加と並行してアポトーシス誘導効果が抑制されることが確認された。これは、骨髄間質細胞が白血病細胞にミトコンドリアを供給することによって直接的な代償効果を提供し、薬剤耐性を誘導することを示す。さらに、酸化的リン酸化阻害剤IACS-010759に感受性および耐性の急性骨髄性白血病細胞を移植したマウスモデルを用いて、IACS-010759投与後のプロモーター領域の遺伝子発現の変化をCAGE解析により調べた。その結果、移植した白血病細胞においてIACS-010759投与後にアミノ酸代謝関連遺伝子ASS1および脂質代謝関連遺伝子LRP1の発現が増加することがわかった。 ASS1はアルギニンの生合成における重要な酵素であり、LRP1は脂質代謝において主要な役割を果たし、白血病細胞におけるヘミン誘発性のオートファジーに関与している。このような骨髄微小環境におけるエネルギー代謝機能維持が白血病細胞の酸化的リン酸化抑制をはじめとする各種ストレスへの耐性に作用すると考えられた。
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