研究課題
急性骨髄性白血病は、治療後の骨髄残存微小病変は環境内で細胞生存・増殖し再発につながる。FLT3遺伝子のITD変異(FLT3-ITD)は治療予後不良と強く相関する。本研究では、FLT3-ITDを導入した株化培養細胞株K562(K562-FLT3)をモデル細胞として、細胞外マトリックスとの接触について抗がん剤耐性獲得での役割を明らかにすることを目的とした。先行研究の成果の再現性検証と展開を以下のごとく行った。K562-FLT3細胞は、ファイブロネクチン(FN)またはコラゲン4をコーティングした培養プレートにて培養した結果、Ara-C耐性が増強した。その際、FN接着を特異的に抑制する抗β1インテグリン抗体の投与を行ったところ、Ara-C耐性は減弱した。K562-FLT3細胞における遺伝子発現を調べた結果、ファイブロネクチン遺伝子(FN)とFGFR1の発現上昇が見られ、オートクライン機序にて細胞と細胞外マトリックスとの相互反応を強化し、治療抵抗性をもたらす可能性が示唆された。細胞内シグナル発現を知るため、関連する特異的分子を調べた。TGFB1, TGFBR2, TGFBR1その他17遺伝子を定量的リアルタイムPCRで調べた結果、FN存在下で、TGFB1、TGFBR2とSMAD2遺伝子発現が亢進していた。さらに、FLT-3陽性のMOLM14細胞とMV4-11細胞にて、TGFβ1 蛋白レベルをウェスタンブロットにて調べた結果、FN存在下にて2倍の発現亢進が認められた。TGFβR1蛋白レベルとそのリン酸化は、FN存在下で発現低下していた。TGFβ1発現上昇とTGFβR1発現低下が確認された。これらは、細胞介在の治療抵抗性をもたらす細胞と細胞外マトリックスとの相互反応(骨髄ニッチ・クロストーク)の結果、Ara-C耐性の増強における分子メカニズムとなる可能性が示唆された。
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Pediatr Blood Cancer
巻: 67 ページ: e28692
10.1002/pbc.28692.