研究課題/領域番号 |
18K07433
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
宮本 泰豪 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 総括研究員(分子生物学部門長) (90322742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍マーカー / 糖鎖 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
申請者は本研究では、申請者たちが見出した異性体を含む多種類の糖鎖腫瘍マーカー群を、質量分析の Selected reaction monitoring (SRM)法により、高精度、高感度、多項目同時測定する技術の確立を目指している。 昨年度は使用するHPLCシステムを、nano-HPLC(流速 2micro liter/ min、0.2mm X 50mm系のミクロカラムを使用)と、conventionalなHPLCとで、感度や分離能を比較した。その結果、conventionalなHPLCでは、nano-HPLCに比して感度は1桁程度落ちるものの、分離能には優れていた。本研究の目的達成には、感度はもちろん重要であるが、それ以上に異性体の分離が必須であることから、conventionalなHPLCでのシステム構築を採用した。今年度は、感度を上げることに取り組んだ。低感度の一つの理由は、注入したサンプルがC18カラムを通過中に拡散しピークがブロードになることが上げられる。糖鎖はC18カラムへの吸着能は低い。アプライするサンプル量は5-10microLであるが、サンプルループが100micro Lであるため、サンプルループを溶媒が流れる間に拡散するものと考えられた。そこで、サンプルが注入された後、サンプルループを通過しないように(ループカット)して溶媒を流す条件を試行錯誤した。その結果、流速50micro liter/minで測定を開始した後、2分後にループカットすることで、サンプルのカラム内での拡散を防ぐことができ、3-5倍程度の感度の上昇につながった。HPLCカラムと質量分析装置をつなぐtube内で拡散する可能性も検討した。PEEK tubeを使用しているが、0.125mm系のtubeに比して、0.05mm系のtubeの方がサンプルの拡散が少なく、感度が2倍程度上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に実施した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の技術の改良、特に感度を上げるための取り組みは、本研究目的である多種類の糖鎖腫瘍マーカー候補をSRMで測定するために必要な技術であり、実施計画に沿ったものである。目標達成に向けて、着実に前進していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はconventionalなHPLCを用いた糖鎖の、感度の上昇させるための研究に取り組み、一定の成果が得られた。今後は多種類の糖鎖マーカー候補を一度に分離するシステムの構築が必要となる。まずは順相のアミドカラムとC18逆相カラムとを比較して、異性体の分離にはどちらが優れているかの検討を行う。分離するカラムが決まった後は、カラムの内径、長さ、粒子系などを最適化すると共に、分離に用いる溶媒を慎重に選択する。ギ酸とトリエチルアミンをベースとした溶媒を用いることになると思われるが、分離能と質量分析のイオン化効率の両方を満足させる濃度を決定しなくてはならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は消耗品の購入品は多かったが、高価なものを購入する必要がなかった。さらに、研究を遂行する上で、備品などを購入する必要がなかった。 次年度は最終年度となるため、HPLC用のカラム、酵素類、チューブ類などの消耗品の購入、学会での成果発表のための旅費、論文発表を予定しているための英文校閲費などに計画的に使用する。
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