研究課題/領域番号 |
18K07434
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
千葉 仁志 北海道大学, 保健科学研究院, 名誉教授 (70197622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リゾリン脂質 / アルブミン |
研究実績の概要 |
リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)はLysophosphatidylcholine(LPC)に次いで生体内に多く存在するリゾリン脂質であるが、LPEのヒト血中の存在様式に関する報告は少ない。令和4年度は、ヒト血中LPEの存在様式の解明を目標にした。下記に令和4年度の研究成果について記す。 当研究室で開発したLPEの定量系を用いて血清中のLPE濃度や存在比を求めたところ、多価不飽和脂肪酸が結合した分子種が全体の約60%を占めることがわかった。また、LPEはリポタンパク質画分よりもアルブミン画分でより多く観察された。AutoDockを用いる結合予測では、分子種ごとにアルブミンとの結合部位が異なった(主にIIA、IIB)。以上の結果により、主要なLPE分子種がアルブミンと結合して血中に存在していることが判明された。AutoDockを使用して蛍光置換アッセイとin silico分子ドッキング実験を実行し、HSA上のLPEの親和性と結合部位を確認した。 HSAの薬物部位1および2に対するLPEの結合親和性は比較的低く、阻害係数(Ki)値はそれぞれ約11μMおよび3.8μMであった。 AutoDock分析により、薬物部位に結合したLPEのコンフォメーションと、他のHSA部位に結合するLPEの可能性が明らかになった。これらの発見は、LPEの生物学的および病理学的機能を解明するのに役立つ可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPE定量に必要な液体クロマトグラフィー(LC/MS)分析法が当ラボでは既に確立されており、ヒト血中LPEの定量が可能となり、本研究課題が概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の実験を実施する予定である。 1.肝細胞に酸化ストレス(AAPH)負荷時のLPEの変動を観察する。 2.LPEの肝細胞に及ぼす影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、発注した一部の試薬や部品が年度内に納品できず、助成金が予定どおり利用できなかった。次年度は試薬や部品の注文先を変更し実施する予定である。
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