研究課題/領域番号 |
18K07435
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福原 規子 東北大学, 大学病院, 講師 (10534167)
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研究分担者 |
一迫 玲 東北大学, 大学病院, 教授 (30184625)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 |
研究実績の概要 |
疫学調査として宮城県におけるリンパ腫の登録調査を昨年の引き続き進め、今年度は既登録者の長期予後調査にも着手した。濾胞性リンパ腫の治療層別化する上で、病理学的なgrade分類は重要な因子の一つであり、大型芽球様細胞を主体としたdiffuseな領域の割合による予後への影響を解析した。2010-2016年にMIYAGI studyで診断された濾胞性リンパ腫grade3A, 3B例のうち臨床データが利用可能な93例を観察期間中央値4.6年でみると、gradeの違いやdiffuseな領域の割合(0%, 1-50%, 51-99%)では全生存期間に有意差は認められなかった。一方、diffuseな領域の割合が高い群(50%<)では3.5年以降の長期予後が良好であり、次年度は分子病理学的な検討を追加する。 濾胞性リンパ腫の中でも予後良好とされる、限局期と進行期低腫瘍量群の分子病理学的解析に着手した。当院倫理委員会で承認を取得後に、病理検体が入手可能例のパラフィンブロックからRNAを抽出し、nCounterを用いた発現解析を開始した。少数例の解析では(限局期9例、進行期低腫瘍量群10例)、限局期では腫瘍免疫に関連する遺伝子が高発現し、LAG3の高発現が特徴的であった。一方、進行期低腫瘍量群ではB細胞および腫瘍進展に関連する遺伝子の高発現を認め、FOXP3の高発現が特徴的であった。予後不良とされる高腫瘍量群を対象とした網羅的ゲノム解析の既報では、これらの特徴は認められないことから、臨床的分類であるはずの限局期や進行期の低腫瘍量および高腫瘍量分類は、分子学的にも層別化されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
濾胞性リンパ腫の分子病理学的検討を進めているが、分担施設の倫理委員会の承認や機器の修繕に時間を要したためサンプルと臨床データの回収に注力し、解析は次年度に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
濾胞性リンパ腫の限局期と進行期低腫瘍量群を対象とした発現解析を引き続き進めていく。自施設からはさらに23例分のRNA抽出済みであり、倫理委員会の承認が得られた分担施設からの検体を追加する予定である。また、特徴的な発現パターンについては免疫染色で蛋白発現を確認する。 免疫不全関連リンパ増殖性疾患の臨床病理学的解析として、膠原病に合併したリンパ腫46例に臓器移植後のリンパ腫例を加え、両者の特徴などを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
濾胞性リンパ腫の分子病理学的検討として、本年度nCounter解析に必要な試薬等の費用を計上していたが、機器故障のため解析自体を次年度に延期したため、解析に関連した試薬費などを次年度に繰り越した次第です。
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