研究実績の概要 |
疫学調査として宮城県におけるリンパ腫の登録調査および長期予後調査を引き続き進めた。造血幹細胞移植を除くPTLD7例(移植臓器;肺2例、肝1例、腎3例、膵腎同時1例)を解析し、臓器移植からPTLD発症までの期間は1年以内の早期発症の2例はDLBCL non-GCB typeとCD10陰性例に対し、非早期発症例(発症期間中央値は147ヶ月(65-193ヶ月))は全例が胚中心由来(DLBCL GCB-type:2例、HL 1例、FL grade3B 1例、FL grade3B・HL合併1例)であった。非早期発症例では長期免疫抑制状態が発症に影響すると考え、MTX関連リンパ増殖性疾患と共通した発症機序も想定し、両群の遺伝子解析を進めていく。リンパ腫では様々な転座が検出されるが、3方向複合転座は一般的に稀である。MIYAGI studyでは全例にG分染を試みており、DLBCL(n=616)およびFL(n=836)のうち3方向複合転座は10例(FL grade1-2 n=5, FL grade3B n=2, DLBCL GCB n=2, DLBCL non-GC n=1)で検出された。9例にIgH/BCL2を含む転座を認め、そのうち4例(FL n=3、DLBCL n=1)はt(3;14;18)(q27;q32;q21)を含んでいたが、MYC遺伝子異常は認められなかった。本解析から3方向複合転座はIgH/BCL2を有する胚中心由来腫瘍に高頻度であり、MYC遺伝子異常を伴わなかったことが予後に影響しなかった主因と考えられた。濾胞性リンパ腫の中でも予後良好とされる低腫瘍量群の分子病理学的解析では、病理検体パラフィンブロックから抽出したRNAを用いてnCounterによる発現解析を39例に実施し、予後に影響しうる9遺伝子発現を抽出し、現在免疫染色による解析を進めている。
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