研究課題/領域番号 |
18K07436
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00251059)
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研究分担者 |
加藤 貴康 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20646591)
坂本 竜弘 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (60815398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 造血細胞移植 / HEV感染 / 輸血用血液製剤 / 細菌感染 |
研究実績の概要 |
輸血に関わる感染症として最も多いHEV感染と生命危機につながる細菌感染について研究を行った。 A: HEV感染に関する研究 HEVは、通常一過性感染であるが、慢性化することが固形臓器移植でしられており、免疫不全者は重篤化する可能性も高い。そのため、造血幹細胞移植患者について調査を行った。研究協力施設は8施設。325名の患者について379検体を収集した。抗HEV抗体の測定とHEV RNAの測定を自治医科大学ウイルス学研究室で実施した。移植患者の臨床情報を研究主幹が集積し結果をまとめた。 結果 1)抗HEV抗体が検出されたが、HEV RNAが検出されなかった者は4/ 325 = 1.23% 抗体のみ陽性の1名は、IgMクラスの抗体が陽性であり、直近の感染が考えられた 2)抗HEV抗体が検出され、HEV RNAも検出された者は3/ 325 = 0.92% 3)HEV RNAが検出された3名の内の1名は、経口感染、1名は、輸血感染、残る1名は原因が不明であった。 4)HEV RNAが検出された3名の内2名は、ウイルス感染が疑われていなかった。(薬剤性、GVHDなど)5)抗HEV抗体、HEV RNAが陽性であった者 計7名の内、十分な経過が終えていない1名を除き、全員が継続した肝障害を示さなかった。 まとめ 我が国の造血細胞移植後患者に対するHEV感染の実態の一部が明らかとなった。 B 輸血関連細菌感染に関する研究 汚染された輸血用血液製剤により毎年細菌感染が生じ、患者死亡も生じている。これまで血液製剤の外観でのみ細菌汚染を確認していた。短時間で細菌汚染を確認できる方法を探求した。特殊なフィルター上で細菌をトラップして検出する方法を試みたが血小板断片との区別が困難であった。民間企業の開発したAMARTA技術を用いた細菌検出法の開発を現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
造血細胞移植患者のHEV感染症の調査は、研究者の異動後新たに検体輸送契約を結ぶ段階で血液検体の輸送を断られるようになった。ここには、新型コロナウイルスに関する検体の輸送に対し注意を輸送業者が払うようになり、一律に血液検体の輸送を拒否する傾向が作用している。このため、検体の収集が迅速に進まなくなった。 血小板製剤から細菌を検出する方法について、特殊なフィルター上でトラップしてそれを蛍光下で検出する方法について、血小板断片が細菌と同じようにトラップされ、且つ、細菌と同じような蛍光に対する発光を呈し、判別条件を探索する研究もうまく進まなかった。このため、研究が停滞した。
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今後の研究の推進方策 |
造血細胞移植患者さんのHEV感染実態調査は、現時点で一区切りがついているので、新たに検体収集を行うことはしない。論文報告を行う。 輸血用血液製剤に対する迅速な細菌検査法の開発は、技術を持つ企業と研究協力締結を行い、開発を促進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者の異動が生じ、新たな検体集積契約を輸送会社と結ぶ必要が生じたが、輸送会社が血液検体の輸送に対し難色を示し、検体集積が進まなくなった。また、研究協力者への説明と研究者による検体搬送が、新型コロナウイルスの発生によりできなくなった。さらに患者さんも造血細胞移植施設に新型コロナウイルス感染のリスクを考慮し通院しなくなっていた。このため研究が進展しがたくなった。細菌汚染の迅速検出法の開発が技術的に困難になり、次のステップに進めなくなったため、新たな検出法の模索を行ったことも次年度使用額が生じた理由です。
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