本研究では,代表的な補腎剤である牛車腎気丸を中心に,抗酸化活性の弱い補剤がどのように生体保護効果を示すかについて,1)動物モデルにおけるライブイメージング,2)ヒト血清抗酸化プロファイル変動,により解明することを目指した. 動物モデルにおけるライブイメージングは血流動態の観察評価と一酸化窒素を中心とした活性酸素・活性窒素種の発生の検出を行った.方法としてはマウス腹側部皮下血管を用い,皮下血管の微小循環への影響を動脈から毛細血管に掛けて解析した.また,ラット腸間膜動脈において,蛍光撮影により一酸化窒素合成酵素活性の解析を行った.これらにより,これまで申請者が報告している機序の異なる漢方製剤と比べ,牛車腎気丸の微小循環動態に与える影響の特徴が明らかになり,経験的な漢方における随証治療に現代科学的な論拠を与えるものとなった. ヒト血清における抗酸化プロファイル変動は,対象製剤は補腎剤である牛車腎気丸・八味地黄丸,及び柴胡加竜骨牡蛎湯・黄連解毒湯とし,漢方製剤による治療を受ける患者を対象とし計画した.当該施設倫理委員会に研究内容を申請し承認を得るとともにUMIN-CTRに登録を行った.しかしながら,新型コロナウイルス感染拡大により,検討プロトコルを充足する参加者数が不足し,検討に必要な参加者数を集めることが困難となり,限られた人数を対象にプレリミナルな解析を行うに留まった.
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