研究実績の概要 |
Werner症候群は、思春期以降に、白髪、白内障など様々な老化兆候が出現する「早老症」である。最近、我々は、皮膚硬化と脂肪萎縮を呈し、Werner症候群様の症状をもつ早老症患者において核膜蛋白質ラミンAの遺伝子変異を本邦で初めて同定し、「Atypical Werner症候群」として報告した。同じくラミンA遺伝子変異が原因であるHutchinson-Gilford syndrome (HGS)由来の細胞においてmTOR阻害剤の有効性が報告されているため、「Atypical Werner症候群」由来細胞での有効性について検討を行った。その結果、「Atypical Werner症候群」由来細胞でみられる核変形やヘテロクロマチンの局在異常の優位な改善は得られなかった。さらに、近年、HGSのラミン遺伝子変異をもつ細胞において、ファルネシル転移酵素阻害薬によってプロジェリンの蓄積が解消され、核の形態異常が改善することや、HGS患者に投与した結果、血管病変、骨構造異常が改善したとの報告がされている。そこで、Atypical Werner症候群のラミン遺伝子変異を持つ線維芽細胞における線維化亢進や脂肪細胞のアポトーシス亢進がファルネシル転移酵素阻害薬ティピファルニブによって改善されるのか検討した。その結果、ティピファルニブによる優位な抑制、改善効果は得られなかった。また、患者由来線維芽細胞と健常人由来線維芽細胞を用いて、線維化に関する因子(Collagen type I, TGF-β, αSMA, CTGF, MMP-1, TIMP-1など)を免疫染色、リアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法にて比較した。
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