研究課題
今年度は特にがんと老化の接点となるmicroRNA(miRNA)に着目して研究を行った。がん抑制型miRNAと報告されているmiR874-3pに着目して、ヒト乳がん細胞株を用いて細胞内代謝に関連したがん抑制の分子メカニズムについて検討した。まず、乳がん細胞株MCF-7にmiR-874を発現させてRNAシーケンスを行い、発現変動する遺伝子群を網羅的に解析した。RNAシーケンスでは、p53経路やMyc経路の亢進のほか、メバロン酸経路の複数の遺伝子(HMGCR、PMVK、MVD、FDPS)の発現低下がみられた。次に、MCF-7にmiR-874を遺伝子導入して、細胞周期や細胞死への影響を解析した。MCF-7にmiR-874を導入すると、p53野生型(以下WT)では著明な細胞死が誘導されたが、p53欠失型(以下KO)ではp53WTと比較して軽度であり、p53・c-Myc DKOでは細胞死誘導は認めなかった。一方、p53 KOやp53・c-Myc DKOにおいても細胞周期停止はみられ、miR-874はp53依存的な細胞死誘導とp53非依存的な細胞周期調節を生じると考えられた。そしてmiR-874導入により発現が抑制されたホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)に着目し、レポーターアッセイによりPMVKがmiR-874の標的遺伝子であることが明らかとなった。さらにMCF-7を用いてPMVKをノックダウンするとp53依存的な細胞周期停止、細胞増殖抑制が認められ、これらの抑制効果はGGPPと添加により解除された。本研究において、乳がん細胞株においてmiR-874がPMVKを標的としてメバロン酸経路を抑制すること、p53依存的な細胞死誘導とp53非依存的な細胞周期調節を介してがん抑制的に作用することを明らかにした。miR-874が乳がんの病態解明、診断マーカーの開発につながることが期待される。
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