研究課題/領域番号 |
18K07440
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 泰弘 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60376473)
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研究分担者 |
山本 寛 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10361487)
石井 正紀 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20724438)
長瀬 隆英 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40208004)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 呼吸リズム |
研究実績の概要 |
高齢者が、要介護状態から終末期に至る移行期は、医療およびケアの方向が転換していく重要な時期である。この時期には、病状の不可逆性が、意思決定の重要な拠り所になることが多い。しかし、臓器不全や認知症・老衰の進行した状態では、その臨床経過は多様で、予後を予測するバイオマーカーがほとんどない。我々は、高次機能や身体機能が既に大きく低下している状態では、生命に直結する原始的な機能、すなわち脳幹機能や消化管機能が臨床経過を左右すると予想している。我々は、最初に、過去の終夜睡眠ポリグラフ検査結果をもとに、非終末期の患者の安静閉眼時の呼吸リズムを定量化して評価した。呼吸リズムの定量化は、睡眠ポリグラフ装置にて入眠前の安静閉眼覚醒状態を確認し、その状態での3.5分間の呼吸リズムについて、サーミスターを用いた気流波形全体をフーリエ変換することによるエントロピーSを算出して評価した。解析途中であるが、呼吸リズムの乱れと年齢との関連はみられず、性差も確認されなかった。重症心不全、重症腎不全、高度の肥満、神経変性疾患のいずれかが存在すると呼吸リズムの乱れがみられた。そのほか、肺炎後の経口摂取再開の可否を予測する因子について探索した結果、本研究開始前に想定していたように肺炎前のADLや意識レベルが、肺炎後の経口摂取の可否に関わった。さらに、経管栄養下の患者の胃運動を腹部超音波により評価を継続し、経管栄養終了30分後の胃体部の排出能が37.5度以上の発熱日数と相関した。しかし、これらの患者は、すでに経管栄養が継続できている患者であることもあり、胃運動の超音波による評価が肺炎の発症や発熱、予後の予測に使用できるかは評価困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
呼吸リズムの評価については、きわめて新規性の高いマーカーであるため、当初の研究予定であった前向き研究に先立って、既に存在する終夜睡眠ポリグラフ検査結果をもとに非終末期の患者での検討を実施したため開始が遅れた。しかし、その結果、呼吸リズムに与える因子を新たに明らかにすることができ、本研究全体にとって必須のプロセスであったと考えている。関連して前向き研究全体の開始の遅れはあるが、肺炎患者の後ろ向き調査でも、これまでに注目されていない因子についての検討を加えることができ、今後の前向き研究の下地となった。
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今後の研究の推進方策 |
予定とおり、75歳以上の肺炎患者の急性期、回復期での呼吸リズムや活動、傾眠の評価を実施する。本前向き研究のための倫理審査委員会からの承認もえている。各時点での評価結果や、急性期から回復期の改善の有無が、その後の患者の生存、ADL、摂食状況の予測に応用できるかを明らかにする。また、後ろ向き研究の意義も高く、分担研究者らと多施設の症例の臨床経過を統一して評価しなおす体制をとることができたので、今後はその解析もすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
呼吸リズムの評価については、きわめて新規性の高いマーカーであるため、当初の研究予定であった前向き研究に先立って、既に存在する終夜睡眠ポリグラフ検査結果をもとに非終末期の患者での検討を実施した。そのために前向き研究の開始が遅れたことにより、研究費の使用が少なくなった。前向き研究実施の準備はできており、次年度からは、今年度に予定していた使用計画と同様の物品費その他の目的のため助成金の使用を予定している。
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