研究課題/領域番号 |
18K07441
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
渡辺 志朗 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (00222406)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胆汁酸 / 16sRNA遺伝子 / 腸内細菌 / 飽和脂肪酸 / FXR / TGR5 |
研究実績の概要 |
雌性C57BL/6マウスに9週間に渡って、普通食ならびに高脂肪食を与えた。高脂肪食与えたマウスに対して、五苓散を0.6ならびに2%となるように添加して、さらに5週間飼育した。五苓散の投与によって腸管内でのケノデオキシコール酸(CDCA)からリトコール酸(LCA)への腸内細菌による代謝が亢進している可能性が示された。この反応は7α-脱水酸化にあたるが、腸内細菌叢の解析ではこの活性の亢進を説明できる既知の細菌種の有意な変動は見出されなかった。また7α-脱水酸化はbile acid-inducible (Bai)cluster(Bai)にコードされている一連の酵素遺伝子群によって生じるが、五苓散を投与したマウスの盲腸内容物由来DNA試料中のBaiCD量をPCR法によって調べたが、五苓散の投与によってその量が変化することは確認できなかった。五苓散の投与でみられたそのほかの胆汁酸の変動から、ωMCA、HDCA、UDCAなどの産生を担う2次代謝活性の変動も推測できたが、これまでこれらの胆汁酸の生成に関与する腸内細菌について明確にされていない。したがって今回得られた腸内細菌叢パターンをより詳細に解析することで、五苓散による糞便中胆汁酸の変動を説明しうる腸内細菌の推定ができるかもしれない。一方、五苓散による腸管内胆汁酸の変動が、腸管組織の胆汁酸受容体を介した遺伝子発現量の変化を来すか否かを知るために、FXR依存的に誘導されるSHP、FGF15、FABP6やTGR5の活性化によって変動する炎症性サイトカインのmRNA発現量を評価したが、五苓散によってこれらが有意差をもって変化することは見出されなかった。また腸管のFXR活性の抑制によって肝臓の中性脂質合成が抑制されることが知られているが、五苓散の投与では肝臓のトリグリセリド含量の変動は見出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の初年度において未着手であった腸管組織の胆汁酸応答性分子発現解析は、この計画2年目おいて完了できた。これによってすでに完了している五苓散の腸管内胆汁酸構成と腸内細菌叢パターンの解析への影響を含めて、計画2年目までに計画した内容に着手できた。五苓散の投与によって生じる腸管内胆汁酸の変動から期待したような、胆汁酸・脂質代謝ならびに炎症応答の修飾作用は確認できなかったものの、一応の結論が得られた点から進捗としてはおおむね順調と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
五苓散が腸管内胆汁酸を変化させることが確認できたが、それが腸管の胆汁酸応答にも目立った影響を及ぼすに至ることの可能性が低いと考えられた。そこで五苓散に関する検討はこれ以上進めることは止めて、最終年度は防己黄耆湯についてその腸管内胆汁酸への影響ならびにその機構との生体作用への影響を解析する。実験条件ならびに評価内容は五苓散の研究のそれらと同一にて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画1年目において行った腸内細菌叢の解析費用が、当初計画したときよりも安価であったことで、その分の経費が持ち越された。引き続きその分にほぼ相当する経費分が計画2年目においても余剰となり、それが計画3年目に持ち越されることとなったことが理由である。計画3年目において新たに防己黄耆湯についてこれまでの解析を進めることになるが、これに本来計画された経費を充てるとともに、糞便中の脂肪酸の解析についても追加で行いたいので、その部分に余剰の経費を充てる。これによってその余剰な経費を使用でき、新しい結果が得られることを期待している。
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