研究課題/領域番号 |
18K07446
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山本 昌弘 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (50346392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 椎体骨折 / 椎体微細構造 / 脊柱起立筋 / 筋肉量 / 脂肪量 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病患者では「骨密度が高くても骨折しやすい」。我々はこの事実を統計学的に立証し、骨の量(骨密度)ではなく、骨の「質の低下」が原因と考えられているが、その質の低下の病態は解明されていない。本研究では、骨質の構成要素である骨の構造劣化による骨強度の影響に着目し、また構造劣化の原因として骨を支える筋肉との関係に着目して研究を行った。 本研究において、椎体骨の微細構造の指標である海綿骨スコア(Trabecular bone score: TBS)が2型糖尿病において性別にかかわらず椎体骨密度とは独立して椎体骨折者で有意に低値であり、骨強度への寄与度は骨密度よりも高いことを初めて明らかにした。このことは骨の量的低下によりは構造的劣化が主体的な病因で骨脆弱性が生じていることを意味しており、骨折予防戦略として骨構造維持が重要であることが示唆された。この構造劣化をきたす病因として脊柱起立筋の筋量低下(サルコペニア)と椎体骨折の関係を検討した。脊柱起立筋の計測方法が現存しないため、骨構造解析用ソフトウエアを応用し、脊柱起立筋の筋および脂肪の一断面あたりの面積の定量手法を構築した。日常診療内において、消化管悪性疾患の検索目的に撮影された腹部CT画像を二次利用(試料)として活用し、「背筋」と呼ばれる脊柱周囲筋や筋内脂肪量と椎体骨折の関連を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)骨粗鬆症の発症機序が不明な2型糖尿病において、椎体海綿骨構造の劣化が骨密度よりも骨脆弱性に強く影響することを見出し、論文報告を行った。 2)日常診療内で撮影された腹部臨床CT画像を二次利用し、脊柱起立筋の筋量および脂肪量の試料として活用できること明らかにした。 3)脊柱起立筋内筋肉量および脂肪量の定量法を、国内で入手可能な骨微細構造用解析ソフトウエアで新規に計測法を樹立した。 4)3)の計測法により、椎体骨折と筋量および脂肪量との関連を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
1)女性患者の対象者を150~200名に増加さえて検討を行い、最終的結論を得る。 2)対照群として非糖尿病者において同様な検討を行う。 3)2型糖尿病男性において検討を行い、性差について結論を得る。 4)椎体骨微細構造を計測し、筋量および脂肪量との関連を検討する。 5)上記の検討を別の椎体高断面で検討し、データの一貫性を追証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)実験計画が順調に進み、国内学会、国際学会で研究に必要な計測方法樹立に関する情報収集が不要であったため。 2)試料となる臨床画像の活用時において、データ様式変換等の追加的な費用が発生しなかったため。 以上により創出された資金は被験データの追加解析費用に充当し、研究成果精度の向上に活用する。
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