研究課題/領域番号 |
18K07455
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
石井 直仁 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80212819)
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研究分担者 |
片桐 真人 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (50152674)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 糖尿病性腎症診断法 / ミトコンドリア / マイトファジー / 酸化ストレス / ニトロ化タンパク質 / 尿中ミトコンドリアタンパク質 / 脂肪酸代謝 |
研究実績の概要 |
腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、酸化ストレスマーカーの3-nitrotyrosine生成亢進とミトコンドリアのニトロ化タンパク質同定により、ミトコンドリアは酸化ストレス障害を受けていることを示した。損傷ミトコンドリア蓄積は、細胞障害の原因となる可能性があり、腎機能障害を防ぐためには、損傷ミトコンドリアを分解・除去しなければならない。腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、損傷ミトコンドリアを選択的に分解・除去するマイトファジーの誘導とミトコンドリアタンパク質が尿中に排泄(プロテオーム解析)されることを示した。 本研究の目的は、糖尿病性腎症の早期診断マーカーとしての尿中ミトコンドリアタンパク質排泄メカニズムを検証し、尿中ミトコンドリアタンパク質による診断法の確立することである。 本年度は以下の結果を得た。 1)尿中ミトコンドリアタンパク質排泄メカニズム検証の一環として、腎症発症前の糖尿病ラット腎皮質で、ミトコンドリアでの生命活動維持に必要なエネルギー(ATP)産生に深く関わる脂肪酸代謝を検討した。脂肪酸をミトコンドリア内に輸送するL-カルニチン(脂肪酸と結合したアシルカルニチン)は、腎皮質において、酸化ストレス生成を抑制することにより、高値を示した。L-カルニチンを介したミトコンドリアへの脂肪酸輸送もミトコンドリアの損傷に関連する可能性が示された。この結果、どのような脂肪酸(分画)がL-カルニチンを介しミトコンドリアに供給されているのかを分析し、ミトコンドリアの損傷メカニズムを解析する必要が示された。 2)ミトコンドリアの損傷メカニズムや尿中ミトコンドリアタンパク質排泄メカニズム解析と並行し、本学部倫理委員会へ臨床研究審査申請を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に想定した研究目的の進捗状況は、おおむね順調に進展している。 1)尿中ミトコンドリアタンパク質排泄メカニズム解析 2019年度は、ミトコンドリアダイナミクスの一環として、ミトコンドリアでの生命活動維持に必要なエネルギー(ATP)産生に深く関わる脂肪酸代謝を検討した。ミトコンドリアでは脂肪燃焼であるβ酸化が行われている。脂肪酸がエネルギーとして利用されるためには、ミトコンドリア内に輸送されなければならない。必要な脂肪酸がミトコンドリア内膜を通過するためには、脂肪酸輸送体であるL-カルニチンが必要とされる。本研究で、脂肪酸とL-カルニチンが結合したアシルカルニチン濃度は、腎症発症前糖尿病ラットの腎皮質において、酸化ストレス生成を抑制することにより、高値を示した。損傷ミトコンドリア機能改善に働いている可能性が示された。この現象は、昨年度示された機能である腎症発症前の初期糖尿病の腎皮質で既にミトコンドリア分裂(ミトコンドリアダイナミクス)が亢進することと共に、ミトコンドリア品質管理機構のマイトファジーとの連動に重要と考えられた。 2)尿中ミトコンドリアタンパク質解析(臨床研究) 対照患者群、検体採取、説明・同意、等の臨床研究申請書を作成し、2020年から臨床研究が開始できるよう本学部倫理審査委員会への申請を進めた。 以上の成果を踏まえ、研究計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は以下の検討を行う予定である。 1)ミトコンドリアとリソゾームの機能解析 マイトファジーは、オートファゴソームが形成されリソゾームと融合し、消化酵素によって分解されることから、昨年度に続き、腎症発症前の糖尿病の腎臓でのリソゾーム機能を解析する。また、生体内に近い状態を維持し解析できるラット近位尿細管細胞の初代培養法を確立する。 2)脂肪酸代謝解析 ミトコンドリアでの生命活動維持に必要なエネルギー(ATP)産生に深く関わる脂肪酸代謝、特にL-カルニチン変動(アシルカルニチン、遊離カルニチン)、脂肪酸の種類(分画)を解析する。 3)患者尿中ミトコンドリアタンパク質解析(臨床研究) 本学部倫理審査委員会で承認された臨床研究において、同定されたミトコンドリアタンパク質を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率よく実験が進行したため試薬購入額を抑えることができた。また、2020年度は患者尿中ミトコンドリアタンパク質解析(臨床研究)を進めるにあたり、使用額が計画を超える可能性があることから、次年度への使用額を繰り越した。 2020年度の患者尿中ミトコンドリアタンパク質解析に、次年度使用額(160,480円)を追加する。
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