研究課題
腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、酸化ストレスマーカーの3-ニトロチロシン生成亢進とミトコンドリアのニトロ化タンパク質同定により、ミトコンドリアは酸化ストレス障害を受けていることを示した。損傷ミトコンドリア蓄積は、細胞障害の原因となる可能性があり、腎機能障害を防ぐためには、損傷ミトコンドリアを分解・除去しなければならない。腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、損傷ミトコンドリアを選択的に分解・除去するマイトファジーの誘導とミトコンドリアタンパク質が尿中に排泄(プロテオーム解析)されることを示した。近位尿細管細胞は、再吸収・分泌・排泄機能を担い多くのエネルギーが必要とされ、エネルギー産生をするミトコンドリア機能と腎臓機能は密接な関係がある。ミトコンドリアの機能低下は、糖尿病性腎症発症・進展の一端を担っており、ミトコンドリア機能評価は、腎機能評価に繋がると考える。本研究の目的は、糖尿病性腎症の早期診断マーカーとしての尿中ミトコンドリアタンパク質排泄メカニズムを検証し、尿中ミトコンドリアタンパク質による診断法の確立することである。本年度は以下の結果を得た。1.動物実験 1)マイトファジー分解不全尿中ミトコンドリアタンパク質の排泄パターン解析 限外濾過法による尿濃縮法の改良により、同定された尿中ミトコンドリアタンパク質のウエスタンロッティング画像の再現性は向上した。 2)ミトコンドリアでのエネルギー生成を担う脂肪酸代謝 ω6脂肪酸からω3脂肪酸への脂肪酸代謝シフトが示された2.臨床研究 補助期事業間中に十分な結果を集約できなかった。慢性腎臓病(CKD)診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)」により分類した4群の患者尿検体の採取のため、現協力病院に加え、新たな病院と共同研究の話し合いを進めている。「研究倫理審査委員会」へ「協力病院の追加申請」をし、2023年も臨床研究を継続し行う。
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