研究実績の概要 |
1. タウトランスジェニックマウスTg601による伝播モデル作成 アルツハイマー病患者脳サルコシル不溶性画分をTg601マウスおよび正常マウスの一側海馬に注入すると,学習機能障害および,リン酸化タウ陽性の神経細胞およびNeuropil threadsを海馬歯状回,錐体細胞層,0海馬采,脳弓,中隔核に認められ,その量はTg601マウスの方が正常マウスより多かった。一方、学習障害の程度は大きく変わらなかった。更に,この伝播に対する毒性反応を調べるために海馬神経細胞数,グリア細胞数をカウントした。神経細胞数,アストログリア細胞数は変化なかったが,ミクログリア細胞数は伝播により増加していた。マウスタウ特異的抗体を用いた検討では,動員されるタウは導入されたヒト由来タウ蛋白ではなく,内在性のマウスタウ蛋白であることがわかり,伝播には蛋白構造が影響することがわかった。 2. 細胞モデルを用いた欠損変異体による伝播阻止配列同定 昨年度までに同定した欠損変異体8の領域(353-368)内で、どのアミノ酸が最も伝播阻止に寄与するか、欠損変異を3つに分割、更に狭めていった。その結果Asnを欠損すると最も凝集しづらくなることがわかった。近年報告されたアルツハイマー神経原線維変化のクライオ電顕による構造からAsnの対側にあるアミノ酸の欠損変異体を作成し,同様を確認した。さらに,シードとして、リコンビナントだけでなくアルツハイマー病(AD),進行性核上性麻痺(PSP),皮質基底核変性症(CBD)脳の不溶性画分を使用したところ,このアミノ酸欠失の効果はAD脳に特異的な効果であり,CBD, PSP脳をシードとした場合には凝集能は変わらないことがわかった。この領域に対する抗体を作成し,この培養実験系で凝集阻止効果をみたが効果ないことがわかったが、本結果はシード依存性凝集に重要な知見であると思われた。
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