研究実績の概要 |
1. タウトランスジェニックマウスTg601によるタウオパチー伝播モデル作成 アルツハイマー病(AD)患者脳を2カ月齢野生型タウ過剰発現Tg601マウス(N=18)および正常マウス(N=20)の一側海馬に注入した。統計はすべて二元配置分散分析を用いた。17~19ヶ月後に学習障害評価にバーンズメイズテストを行ったところAD脳注入群に学習障害を認めた。終了後、サクリファイスし、組織学的評価を行った。海馬采におけるAT8陽性Neuropil threads 数はAD脳注入により増加していた。海馬錐体細胞層におけるリン酸化タウ(AT8)陽性神経細胞数はAD脳注入群において多くTg601に更に多かった。AT8陽性病理は橋青斑核、中脳縫線核にも認めたが、基底核、大脳皮質にはなかった。海馬門におけるGFAP陽性アストロサイト数、海馬錐体細胞のNeuN陽性神経細胞数も変化なかった。Iba-1陽性ミクログリア細胞数はAD注入群で多かった。海馬のミクログリアは他の部位よりも免疫応答過敏であるが加齢により減弱することが知られており、今回の行動障害に関与する可能性を考えた。本研究はJournal of Alzheimer’s diseaseに論文化した。 2. リチウム誘導性オートファジーのシード依存的性質 タウオパチーにはAD、進行性核上性麻痺(PSP), 皮質基底核変性症(CBD)が含まれるが、シードの異なる高次構造が、病理学的広がりを規定するとされている。本研究ではシード依存性タウ蛋白培養細胞モデルを用い、オートファジー分解が、シードにより異なるかどうかを調べた。48時間のリチウム添加により不溶性タウの減少、LC3-II上昇、P62の減少がADおよびPSP脳導入時にはみられたが、CBDではみられず、この反応はIMPaseを介していることがわかった。以上の研究はBiochemical and Biophysical Research Communicationsに論文化した。
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