研究課題/領域番号 |
18K07457
|
研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
長島 史裕 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (60228012)
|
研究分担者 |
香川 正太 第一薬科大学, 薬学部, 講師 (30463201)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 漢方補腎剤 / 2型糖尿病 / インスリンシグナル / 八味地黄丸 / 牛車腎気丸 |
研究実績の概要 |
第一に、八味地黄丸が2型糖尿病における耐糖能異常およびインスリン抵抗性におよぼす影響を検討するため、肥満・2型糖尿病モデルであるob/obマウスに30週間コントロール食(ob/ob-ND)および八味地黄丸混餌(ob/ob-HJG)を摂餌させ、糖負荷試験およびインスリン負荷試験を実施した。その結果、糖負荷試験では、血糖値の上昇がob/ob-ND群とob/ob-HJG群とで有意な差は見いだせなかった。しかし興味深いことに、インスリン負荷試験の結果、インスリンによる血糖値の変化がob/ob-ND群と比較して、ob/ob-HJG群において有意に低下し、インスリン感受性が亢進、改善していることが解った。 インスリン感受性改善の機序を探索するために、ob/ob-ND群およびob/ob-HJG群のインスリン標的組織である肝、骨格筋および白色脂肪組織におけるインスリンシグナル伝達を精査した。結果として、ob/ob-ND群と比較して、ob/ob-HJG群の肝および白色脂肪組織におけるインスリンシグナル伝達分子Aktのリン酸化が有意に亢進していることが解った。骨格筋ではAktリン酸化における2群の有意な変化は見いだせなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
漢方補腎剤である牛車腎気丸、八味地黄丸および六味丸のうち、今年度は八味地黄丸に着目して、これの抗糖尿病効果に関しての検討を行った。大変興味深いのは、肥満・2型糖尿病モデルであるob/obマウスに八味地黄丸を長期投与すると、耐糖能異常は改善できなかったが、2型糖尿病の特徴的な病態であるインスリン抵抗性を改善することができたことである。また、八味地黄丸の長期投与は、肝および白色脂肪組織のインスリンシグナルが有意に亢進し(Aktリン酸化の回復)、個体におけるインスリン抵抗性改善のメカニズムとして、インスリンシグナル伝達の改善が挙げられることが解った。現在、さらに詳細なメカニズムを精査するため、肝における糖代謝・脂質代謝に必須な遺伝子群の発現を解析し、また、白色脂肪組織および褐色脂肪組織における脂質・エネルギー代謝に必須な遺伝子群を解析している最中である。さらに現在、八味地黄丸だけでなく、牛車腎気丸に関しても、ob/obマウスに長期投与を実施し、飼育している状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
第一に、八味地黄丸の糖代謝およびインスリン抵抗性改善効果解析中のob/obマウスの体重変化を経時的に追った結果、有意ではないが、ob/ob-ND群と比較して、ob/ob-HJG群において体重が低い表現型を見出している。そのため、現在、八味地黄丸の抗肥満効果について、白色脂肪組織および褐色脂肪組織での脂質・エネルギー代謝に必須な遺伝子群の解析を順次進めており、来年度も継続して推し進めていく。また、牛車腎気丸に関して、2型糖尿病に対するマウスの表現型を解析するために、インスリン負荷試験および糖負荷試験を開始していく予定である。結果がポジティブであれば、八味地黄丸と同様に肝、骨格筋および白色脂肪組織におけるインスリンシグナル伝達の変化を精査していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
白色脂肪組織や褐色脂肪組織に関する遺伝子群の解析やELISA等を使った分析で使用するキット類や酵素試薬を購入するために使用します。
|