本年度は、八味地黄丸および六味丸が肥満におけるインスリン抵抗性や糖代謝に与える影響を検討した。 過去にob/obマウスにおけるインスリン抵抗性改善作用を報告したが、本年度はさらに高脂肪食負荷に伴う食餌性肥満モデルマウス(C57BL/6J)に八味地黄丸を投与した際のインスリン抵抗性改善作用を検討した。興味深いことに、食餌性肥満においても、ob/obと同様にインスリン負荷試験において血糖値の低下作用を見出した。また、空腹時のインスリン分泌には影響を与えなかったものの、随時血糖および空腹時血糖の有意な低下とそれに伴うインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRの有意な低下を見出した。これらの結果から、八味地黄丸は様々な条件(レプチンが欠損したob/obおよびレプチン抵抗性が認められる食餌性肥満モデルC57BL/6J)に由来する肥満に伴ったインスリン抵抗性を有意に改善し、その機序の一端として、内臓脂肪および肝におけるインスリンシグナルの改善が寄与していることを証明できた。 六味丸に関しては現在、ob/obマウスおよび食餌性肥満モデルにおける六味丸投与が糖代謝に与える影響を検討中であり、少なくとも体重変化や随時血糖に及ぼす影響は認められていない。加えて八味地黄丸同様に、インスリン感受性試験および空腹時の血糖及びインスリン値を測定することで、六味丸の糖代謝に与える影響を精査していく最中である。これらの数値に変化が認められれば、インスリン標的組織のAktリン酸化を精査する。
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