研究実績の概要 |
apoEのジスルフィド結合複合体がapoEのレドックス状態の維持調節(Biosci. Rep., 2019, doi:1042/BSR20190184)および脂質代謝機能に影響している(Biol. Chem., 2020, doi:10.1515/hsz-2019-0414)という前年度までに得られた研究成果を踏まえ,適切な指標を用いた血清apoEのCys-thiol基のレドックス状態の評価は動脈硬化症やアルツハイマー病などのapoE関連疾患の診療において有用であると考え,有望な指標(redox-IDX-apoE)を探索するとともに臨床的有用性について検討を行った. 総apoE濃度(total)と我々が確立したマレイミド化合物によるバンドシフトアッセイの結果から算出した還元型apoE(red),可逆的酸化型apoE(roxi),不可逆的酸化型(oxi)の各濃度とこれらから求めた9種類の比について解析を行った結果,年齢と性の影響を受けない3つの比roxi/total, red/roxi, (red+oxi)/roxiがredox-IDX-apoEの有力な候補になり得ると考えられた. 多変量解析の結果より,3つの比に影響を与える独立因子は血清トリグリセライドセライド(TG)濃度とHbA1c値であり,これら2項目とroxi/totalは負の相関,red/roxiと(red+oxi)/roxiは正の相関を示した.一方,動脈硬化症を伴なった2型糖尿病患者血清では対照血清に比べTGとHbA1cは高値を呈したが,red/roxiと(red+oxi)/roxi は低値を示した. 以上より,apoEのCys-thiol基のレドックス状態は脂質・糖代謝に密接に関係しており,代謝異常に伴う病態の違いによって変化する可能性が示唆された(英文誌投稿中).
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