研究課題/領域番号 |
18K07462
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
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研究分担者 |
野村 文夫 千葉大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80164739)
東 達也 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (90272963)
小川 祥二郎 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (30546271)
西村 基 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (80400969)
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90344994)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | LC-MS/MS / Vitamin D / Estrogen / Androgen / 同時定量 / 臨床検査 / 自動化 |
研究実績の概要 |
臨床検査においてステロイドホルモン等の低分子代謝物の測定は抗体を用いた免疫学的測定法(イムノアッセイ)で行われてきた。しかしながら、この方法では結合タンパク質との解離方法の違いや、使用する抗体によって類似構造体の認識能が異なることから、各施設間で測定値が異なるという問題が起こっている。低分子代謝物は微細な構造変化でその生理活性が大きく異なることから、正確な測り分けが求められる。これらの問題点から、欧米では早くからLC-MS/MSを用いた測定の検査応用が進められている。LC-MS/MSではイムノアッセイと異なり同時多項目測定が可能なため、検体使用量やコストの削減が容易であること、測定値の直線性とダイナミックレンジが広いことから大手検査センターを中心に広く利用されている。実際にアメリカ臨床化学会では例年、発表演題の15%が質量分析を用いた演題であることからも窺える。これに対し、本邦では全く利用されていないのが現状である。 そこで本研究では、この分野でイオン化効率の悪さから最も測定が難しいとされているビタミンD・エストロゲンとアンドロゲンを対象として、LC-MS/MSを使用した定量測定法を臨床検査に応用することを第一の目的として、臨床検査において求められる非常に高度な精度・再現性・堅牢性を兼ね備えた測定法・前処理法を確立するとともに、測定キットの開発を行っている。 現在までにビタミンD・エストロゲンの測定法における論文を報告した。アンドロゲンについては測定法の構築は終了し、測定の安定性等の検証を行っている。また、測定キットにはキャリブレーター、クオリティーコントロールサンプル、前処理カラム、分析カラム等の様々な構成要素が存在する。その中でも特に重要な誘導体化試薬における特許を国内、海外で出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VitaminD代謝物だけでなくエストロゲン・アンドロゲンの測定法を確立することができた。VitaminD代謝物は様々な検体を用いて血中濃度を測定を行い、健常人の濃度分布を正確に把握することができた。これにより今後の疾患検体での閾値の設定が正確に行うことができる。 測定法をもとに各診療科との研究が進むことにより、現行の日常検査での問題点が明らかになり、実際に問題が起きていることが予想される検体の収集につなげることができた。 また、測定キット化に向けた開発も特許の取得を含め進めることができ、実検体での性能評価を行うところまで進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
エストロゲンレセプター/プロゲステロン受容体陽性[HR(+)]の乳癌に対する手術後内分泌療法として術後10 年行うことが望ましい事が明らかとなってきている。閉経後HR(+)乳癌患者に対しては体内のエストロゲンを低下させる目的でアロマターゼ阻害剤(AI 剤)の内服が標準的治療であるが、AI 剤を10 年間内服するメリットがあるのは、①内服により血中エストロゲン濃度が低下し、②その低下が抗腫瘍効果を発揮する患者と考えられている。しかしながら、実際にはAI 剤によるエストロゲン濃度の低下は測定感度が足らず確認できていない。治療としてエストロゲンの濃度を下げることが行われているため、どこまで測定感度を上げられるかは困難を極めるが、一方で治療をしているにも関わらず、エストロゲンの検査結果が高い値を示す検体が散見されている。これらの検体はイムノアッセイでは正確に測定できていない可能性があるため原因究明のため検体の採取を進めていく。アンドロゲンについても同様の事象がないか確認する。より日常検査を意識した実検体での検討を行うことで、測定法の改良やキット開発につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外取り寄せ品で発注から納期の期間が年度をまたいでしまうため次年度へ繰り越しとした。
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