高齢者においてフレイル(虚弱)は、加齢に伴って認められる身体機能や認知機能の低下など、ホルモン低下をはじめとする種々の要因や背景によって引き起こされ、また漢方医学領域において腎虚などに代表される虚証との関連性も指摘されている。こうしたフレイルは、要介護リスクの増加に加えてQOLや生命予後に対して影響を及ぼす可能性が示されている。また、フレイルと密接に関連する要因としてサルコペニア(加齢性筋肉減少症)が挙げられる。加齢に伴う骨格筋と骨との相互連関(筋骨連関)やサルコペニアと骨粗鬆症との病態関連性などに関してはホルモン作用の関与も示唆される一方で未だ解明に至っていない状況であり、サルコペニアの予防・診断・治療法の開発が待たれる。本研究課題では、こうしたサルコペニアの病態や筋骨連関の解明を目指し、性ホルモン作用に関与する遺伝子改変マウスを用いた解析や、漢方薬の中でもホルモン作用との関連性が指摘されている補剤や同抽出物・成分等を中心に、サルコペニアや筋骨連関に対する制御の可能性について解析を行った。その結果、同マウスでは骨格筋や骨に関する表現型が一部で示唆された。また漢方薬補剤成分中には、骨格筋代謝に関わる因子を発現制御する可能性がreal-time PCR法、Western blot法、組織学的検討などを通じて示され、骨格筋タンパク分解抑制作用およびサルコペニア制御作用を有している可能性がin vivo、in vitroにおける検討によって示唆された。こうした知見を今後さらに発展させ、サルコペニア・フレイルや筋骨連関に対するホルモンや漢方薬補剤成分を含めた制御作用について解析を進める予定である。
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