研究課題/領域番号 |
18K07469
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
熊木 天児 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (30594147)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 膵癌 |
研究実績の概要 |
膵癌診療の向上を目指した本臨床研究では、「膵癌危険因子を有する群の中からさらに高危険度群を明らかにすること」および「化学療法における予後不良因子を解明してQOLにも配慮した診療指針を提起すること」を目的とし、新たな診療アルゴリズムを提唱したい。本研究により膵癌高危険度群に対するスクリーニング体制が構築され早期診断および予後改善につながることが期待される。また、化学療法の効果が期待できる群を抽出することにより、QOLに配慮した診療のみならず医療経済を考慮した診療に貢献できる。 膵癌の危険因子としてmodifiable factors(糖尿病、肥満、飲酒、喫煙)およびnon-modifiable factors(家族歴、家族性膵癌、IPMN)が知られている。しかし、膵癌早期診断につながる囲い込むべき群(高危険度群)は不明である。研究遂行の半ばではあるが、後ろ向きデータ集積の中間解析では、膵癌診断時に多くの症例が糖尿病、脂質異常、高血圧、いずれかの生活習慣病を合併していた。そして、合併症数を多く有する群は早期診断されていないにも関わらず生存期間が延長していた。 また、遠隔転移膵癌に対する化学療法適応基準の同定および膵癌高危険度群の同定を試みている。膵癌に対する新規化学療法登場により、長期予後は改善している。しかし、化学療法を受ける膵癌患者の予後不良因子は不明である。そこで、我々は膵癌患者のおよそ半数を占める、遠隔転移を有する群に特に注目し、化学療法の効果が期待できない群を明らかにすることを目的としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌診療の向上を目指した本臨床研究では、「膵癌危険因子を有する群の中からさらに高危険度群を明らかにすること」および「化学療法における予後不良因子を解明してQOLにも配慮した診療指針を提起すること」を目的としているが、新型コロナウイルスの影響により、診療や研究活動に制限があり、前者の前向き研究が停滞している。 一方、後者は順調に進んでおり、まもなく公表予定である。具体的には、化学療法群では肝転移、NLRとCA19-9、緩和ケア群では肺転移、腹膜播種とCARが予後規定因子として挙げられ、治療方針を決定する際に考慮すべきであることが明らかになった。そして、複数の因子を持つ患者は予後不良であり、化学療法群の16.3%が治療の恩恵を受けられず、緩和ケア群の37.2%が化学療法の恩恵を受けられた可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の如く、新型コロナウイルスの影響により、診療や研究活動に制限があり、前者の前向き研究「膵癌危険因子を有する群の中からさらに高危険度群を明らかにすること」が停滞している。そこで、本テーマは最終目標に到達することなく、後ろ向きのデータとしてまとめることも考慮している。その分、並行して別途後ろ向きでデータ解析の可能なテーマを模索して「高齢者に対する膵癌診療の適応と限界」について取り組んでいる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
以下の理由で、当初予定していた使用額より大幅に少なくなっております。①新型コロナウイルス感染拡大のため、参加・発表予定であった学会への参加を取りやめたため。②データ収集がやや遅れており、必ずしも人件費に費やす必要がなくなったため。③(流通の影響により)パソコン一式の更新ができなかったため。 今後も、すべて新型コロナウイルス感染拡大の状況に依存しているが、以下の通り次年度の使用を計画している。①国際学会への発表予定(新型コロナウイルスの状況による)。②データ入力のための人件費。③パソコン一式・ソフトの更新。④論文にかかる経費(オープンアクセスを含む)。⑤診療および研究に支障を来している研究内容の代替としての新規プロジェクト立ち上げのための費用。
|