研究課題/領域番号 |
18K07474
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
遠藤 真理 北里大学, 東洋医学総合研究所, 上級研究員 (60296829)
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研究分担者 |
清原 寛章 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (70161601)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 補中益気湯 / 白朮配合剤 |
研究実績の概要 |
補中益気湯は、呼吸器や消化器の種々の疾患に適応される。本処方の1構成生薬のうち朮と耆の 2 種(蒼朮と白朮、黄耆と晋耆)の組み合わせが異なる 4 種の処方が漢方専門医による臨床では患者の病態により使い分けがなされているが、その科学的根拠についての検討は十分とは言えない。本研究では、抗CD3抗体の投与により惹起される小腸粘膜炎症モデルマウスを用い、異なる処方構成の補中益気湯処方の作用の比較を行うとともに、作用メカニズムの解析を行った。 その結果、Tリンパ球の活性剤としての抗CD3ε抗体の投与により惹起される全身炎症及び小腸粘膜炎症に対する解析から、晋耆-白朮配合剤は全身炎症に対する改善作用を示さず、晋耆-蒼朮配合剤で有効性を示したことから蒼朮由来の含有成分の関与が重要であると推測された。また、小腸粘膜炎症には晋耆-蒼朮配合剤では改善作用を示さず、晋耆-白朮配合剤で抗炎症作用を示したことから白朮由来の含有成分の関与が重要であることが示唆された。本結果は、漢方医学の経験則で本処方を消化器不調の改善に適応する場合には白朮を優先使用することの科学的根拠の一つとなることが考えられる。また、白朮配合剤の小腸粘膜炎症に対する抗炎症作用は晋耆及び黄耆の違いによる明確な作用の相違は見いだせなかった。さらに、白朮配合剤の選出時間が小腸粘膜炎症改善作用の発現に大きく炎症を与えたことから、加熱により分解が進むと考えられるオリゴ糖等の活性成分として関与が推測された。一方、晋耆‐白朮配合剤の小腸炎症改善作用のメカニズム解析から、その作用発現に上皮組織での炎症性シグナルカスケードの制御性アダプター分子の発現変化、デス受容体の下流に位置するカスパーゼ3経路の抑制が関与している可能性が想定された。今後は、黄耆-白朮、黄耆-蒼朮配合剤の比較、作用成分の探索とともにさらなる作用メカニズムの解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補中益気湯の黄耆、晋耆、白朮、蒼朮の4つの異なる組み合わせのうち、3つについて(黄耆-白朮、晋耆-白朮、晋耆-蒼朮)のTリンパ球介在性小腸炎症および全身炎症に対する作用の特徴についてはこれまでに解析が終了しており、残り黄耆-蒼朮の組み合わせについての解析を残すだけとなっており、おおむね予定通りに検討を行うことが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
黄耆-蒼朮配合剤の特徴を見出す為、Tリンパ球介在性小腸炎症および全身炎症モデルに対する黄耆-白朮と黄耆-蒼朮との作用を比較検討する。各配合剤の作用メカニズムの解析を行うとともに、オリゴ糖をはじめとした配合剤より分画した成分を用いて本モデルに対する作用の解析により配合剤の作用成分の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マスク、手袋等の消耗品を購入する予定であったが、流通が滞っており入手することが出来なかった。
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