血中遊離グリセロール濃度は、内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性を鋭敏に反映するか

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K07477
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 平山 哲 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (10345506)
• 研究分担者: 廣瀬 伸良 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (50189883) ; 三井田 孝 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (80260545) ; 龍野 一郎 東邦大学, 医学部, 教授 (80282490)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 遊離グリセロール / トリグリセライド / インスリン抵抗性 / メタボリックシンドローム / 内臓肥満 / 高度肥満

研究実績の概要

【背景】トリグリセライド（TG）は、リポ蛋白の一部として血中を循環し、肝臓や筋肉、全身の脂肪組織に蓄積される。リポ蛋白および脂肪組織中のTGは、前者がリポ蛋白リパーゼ（LPL）、後者がホルモン感受性リパーゼ（HSL）によって異化される。TGの異化によって生じた遊離グリセロール（FG）と遊離脂肪酸は、エネルギー貯蔵や脂質再合成に利用される。この一連のTGの異化過程において、インスリンは重要な役割を担っており、LPLを促進し、HSLを抑制する。しかし、インスリン抵抗性がある場合、インスリン作用が不足してHSLを抑制できない。よって、脂肪組織のTG異化を抑制できず、脂肪組織に由来する空腹時FG濃度が上昇すると予想される。以上より、血中の空腹時FG値は、肥満を基盤とする代謝疾患における簡便で鋭敏なインスリン抵抗性の指標となる可能性がある。
【目的】汎用分析器で測定できるFG測定法を開発し、肥満における空腹時FG濃度が糖・脂質代謝検査およびインスリン抵抗性指標（HOMA-IR）と関連するかを明らかにする。
【方法】高度肥満患者5名（M/F: 2/3, 平均BMI: 48 ± 8 kg/m2）にて短期内科入院による減量治療の前後で早朝空腹時に静脈血を採取した。グリセロール酵素法を応用した血中FG濃度の高感度定量法を確立し、血中FG濃度と糖・脂質代謝検査の推移を検討した。
【結果および考察】 高度肥満における空腹時FG濃度は、227 ± 83 μmol/Lと高く、トリオレイン換算のTG量として20 ± 7 mg/dLに相当した。短期内科入院後、体重は約4％減少し、TG濃度は有意に低下した。一方、その他の糖・脂質代謝関連指標に有意な変化はなく、FG値の変動も小さかった（治療後FG濃度: 201± 67 μmol/L）。今後、内科治療に加え、胃切除による外科治療後のFG変動を解析する予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Low serum carnitine level is associated with increased urinary carnitine excretion in late pregnancy. (2024)
  • 著者名/発表者名: Yutaro Kobori, Satoshi Hirayama, Yoshifumi Fukushima, Tsuyoshi Ueno, Kazumasa Sekihara, Atsushi Hori, Yuna Horiuchi, Shintaro Makino, Emiko Nishioka, Takashi Miida
  • 雑誌名: Annals of Clinical Biochemistry 巻: － ページ: 45632241239806
  • DOI: 10.1177/00045632241239806
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Higher concentration of 25-hydroxycholesterol in treatment-naive patients with type 2 diabetes compared to healthy individuals. (2023)
  • 著者名/発表者名: Takahito Kai, Satoshi Hirayama, Satoshi Soda, Fumiko Fuwa, Saori Nakagawa, Tsuyoshi Ueno, Atsushi Hori, Takashi Miida
  • 雑誌名: Journal of Clinical Lipidology 巻: 17 ページ: 384-391
  • DOI: 10.1016/j.jacl.2023.04.004
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Lipoprotein lipase concentration in umbilical cord blood reflects neonatal birth weight. (2023)
  • 著者名/発表者名: Reiko Sagara, Satoshi Hirayama, Tsuyoshi Ueno, Atsushi Hori, Yutaro Kobori, Takahito Kai, Emiko Nishioka, Takehisa Matsukawa, Shintaro Makino, Takashi Miida
  • 雑誌名: Clinica Chimica Acta 巻: 542 ページ: 117275
  • DOI: 10.1016/j.cca.2023.117275
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Simultaneous determination of cholesterol precursors, plant sterols, and oxysterols in plasma using one-round pretreatment. (2023)
  • 著者名/発表者名: Naoko Kuwabara, Fumiko Fuwa, Shinji Sato, Satoshi Hirayama, Takashi Miida, Saori Nakagawa
  • 雑誌名: Medical Mass Spectrometry 巻: 7 ページ: 89-97
  • DOI: 10.24508/mms.2023.06.005
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Clinical Characteristics of Homozygous Familial Hypercholesterolemia in Japan: A Survey Using a National Database. (2023)
  • 著者名/発表者名: Yasuaki Takeji, Hayato Tada, Masatsune Ogura, Atsushi Nohara, Masa-Aki Kawashiri, Shizuya Yamashita, Mariko Harada-Shiba and Committee on Primary Dyslipidemia under the Research Program on Rare and Intractable Disease of the Ministry of Health, Labor, and Welfare of Japan (Takashi Miida, Satoshi Hirayama, et al.)
  • 雑誌名: Journals of the American College of Cardiology: Asia (JACC: Asia) 巻: 6 ページ: 881-891
  • DOI: 10.1016/j.jacasi.2023.07.011
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] ２型糖尿病における血中オキシステロール濃度測定と臨床意義の検討 (2023)
  • 著者名/発表者名: 甲斐敬人, 平山哲, 相良利栄子, 宗田聡, 中川沙織, 上野剛, 福島理文, 三井田孝
  • 学会等名: 第63回日本臨床化学会年次学術集会
• [学会発表] 周産期の母体血および臍帯血のリポ蛋白リパーゼ変動と胎児発育の関連 (2023)
  • 著者名/発表者名: 相良利栄子, 平山哲, 福島理文, 上野剛, 甲斐敬人, 西岡笑子, 松川岳久, 牧野慎太郎, 三井田孝
  • 学会等名: 第63回日本臨床化学会年次学術集会
• [学会発表] 精神健康度(GHQ-12)及び摂食障害指標(SCOFF)に対するCOVID-19の異なる影響 (2023)
  • 著者名/発表者名: 大森美湖, 本田善一郎, 平山哲, 松下由美, 山本亜矢, 長部ひとみ, 濵田豊彦
  • 学会等名: 第61回全国大学保健管理研究集会