研究課題/領域番号 |
18K07480
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
尹 永淑 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (00339102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳由来神経栄養因子 / 植物抽出物由来の化合物 / pBDNF-IV / 転写活性 / mRNA / タンパク質発現 |
研究実績の概要 |
現代の社会人や老年期のうつ症状は、社会的な問題になっている。また抗うつ薬は薬効が出るまで数週間かかるため、副作用や基礎疾患の悪化が懸念されている。最近、うつ病患者やうつ様モデル動物において、脳由来神経栄養因子 (Brain―Derived Neurotrophic Factor、BDNF) が低下し、抗うつ剤によって BDNF の発現が増加することが報告されている。そこで本研究では、 薬用植物を含んだ高等植物の天然物から BDNF 発現を増加する抽出物や化合物を探索し、その化合物によるうつ様症状の改善を検証することを目的とした。約 11,600 種の植物抽出物における pBDNF Ⅳ の転写活性のスクリーニングから得られたマメ科植物抽出物を pBDNF Ⅳ の転写活性を指標としながらシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび HPLC により分離・精製を行い、7 種の化合物が単離した。これらの化合物の中、6種の化合物がマウス神経芽細胞腫由来 Neuro 2a 細胞における pBDNF Ⅳ の転写活性が示した。また、昨年、Neuro 2a 細胞において pBDNF Ⅳ の転写活性が示したマメ科由来の4種の化合物は、マウス海馬由来の HT22 細胞においても pBDNF Ⅳ の転写活性を示した。一方、昨年、Neuro 2a 細胞における pBDNF Ⅳ の転写活性が示したタデ科の植物抽出物やマメ科植物抽出物からはそれぞれ一つの化合物を選択し、 Neuro 2a 細胞における mRNA を測定したが、mRNA 発現は増加したものの、有意差は見られなかったので、更に条件検討が必要である。今後、これらの化合物を用い内在性の BDNF のタンパク質発現を確認し、動物実験に進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス神経芽細胞腫由来 Neuro 2a 細胞やマウス海馬由来の HT22 細胞は培養細胞のため内在性の mRNA やタンパク質の発現が多いことから、化合物添加によるBDNF の mRNA やタンパク質の発現を統計的に差を出すのは難い。そのため、内在性タンパク質の発現を下げてから増加させる条件検討や測定方法の工夫が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進について二つを考えている。一つ目は、マウス神経芽細胞腫由来 Neuro 2a 細胞やマウス海馬由来の HT22 細胞における内在性の BDNF タンパク質の発現が多いためウェスタンブロッティングによる内在性の BDNF 発現の差を見出すことは難しいことから、ストレス性ホルモンであるコルチコステロンを様々な濃度や処理時間などの条件を検討し、内在性の BDNF 発現を下げてから化合物による内在性の BDNF 発現を検討する。または ELISA Kit を用いた測定方法を考えている。二つ目は新たに用意した 800 種の植物抽出物を用い pBDNF Ⅳ の転写活性のスクリーニングを行い、報告が多いマメ科植物を除いた植物抽出物を用い、活性成分を単離する。さらに、食用植物が pBDNF Ⅳ の転写活性を示す場合、抽出物による内在性の BDNF 発現誘導を検討する。これらの結果から食品添加物として応用できると考えている。細胞レベルで結果が得られたら、動物実験に進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた動物実験に進めることができず、使用額に差が出た。また、キャンペーイン中に購入することにより予定した調整金より繰越金が生じたが翌年に ELISA Kit 購入や実験動物の購入に充てる予定である。
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