研究実績の概要 |
研究の目的は申請者らが独自に確立した測定系を用いて血清肝性リパーゼ(HL)蛋白量を測定し動脈硬化症重症度における本酵素の動態の意義を解明するである。動脈硬化症を有し冠動脈造影検査を施行された100名(年齢70.7±11.5y, 男87名, BMI 23.6±3.9,LDL-C101±32mg/dl,TG113±54mg/dl,HDL-C47±14mg/dl)においてSYNTAXスコアとHL蛋白量との関係を調べた。SYNTAXスコアは冠動脈疾患重症度を病変形態から定量的に評価するために考案されたスコアリングシステムである。HL蛋白量は血清及びへパリン静注後血症(PHP)を試料とし、私共が独自に開発した抗ヒトHLモノクローナル抗体を用いたELISA法で測定した。血清HL蛋白とbody mass index (BMI), low density lipoprotein cholesterol (LDL-C), triglycerides (TG), high density lipoprotein cholesterol (HDL-C)との相関はそれぞれr=0.213(ns), r=0.210(ns), r=0.111(ns), r= -0.126(ns)。同様にPHP-HL蛋白とBMI , LDL-C, TG, HDL-Cとの相関はそれぞれr=0.266(p<0.05), r=0.139(ns), r=0.275(p<0.05), r=-0.190(ns)だった。 SYNTAXスコアとBMI , LDL-C, TG, HDL-Cとの相関はそれぞれr=-0.270(p<0.05), r=0.022(ns), r=0.033(ns), r=-0.146(ns)であった。SYNTAXスコアと血清HL蛋白量、PHP-HL蛋白量との相関係数はそれぞれr=0.214(ns), r=-0.178(ns)であった。 今回の研究から血清及びPHP-HL蛋白量と冠動脈疾患重症度を反映する一指標のSYNTAXスコアとの有意な相関性がないことが明らかとなった。
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