研究課題/領域番号 |
18K07486
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
津田 博子 中村学園大学, 流通科学研究所, 客員研究員 (30180003)
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研究分担者 |
能口 健太 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (90757494)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロテインS / 遺伝性血栓性素因 / 若年日本人女性 / 予防治療戦略 / 食因子 |
研究実績の概要 |
Protein S (PS)遺伝子多型のPS Tokushima (PS p.Lys196Glu)は日本人の約2%が保有する遺伝性血栓性素因であり、静脈血栓塞栓症のリスクを4~8倍上昇させる。本研究では、PS Tokushimaによる静脈血栓塞栓症の発症予防を目的として、新たな治療戦略の確立とその分子機序解明を目指している。PS活性は閉経前女性で低値であり、妊娠や経口避妊薬服用時などの高エストロゲン状態ではさらに低下するため、PS Tokushimaによる血栓症リスクの高い若年日本人女性を対象としている。 1.若年女性の遺伝素因の検討と血中PS活性に影響をおよぼす候補食因子の探索:2019年度中村学園大学ヘルスチェックを受診した女子大学生のうち、野生型ホモ接合体で妊娠や経口避妊薬服用をしていない176名を対象とした。血中総PS抗原量に関連する身体・血液指標を検討したところ、我々の過去の検討結果(Otsuka Y.et al. 2018)と同様に、アポC-Ⅱ、LDLコレステロール、HbA1cと強く正に相関することを確認した。一方、食品群別摂取頻度法にて評価したエネルギー・栄養素等摂取量、食品群別摂取量はいずれも血中総PS抗原量、LDLコレステロール、HbA1cなどと関連しなかった。 2. 介入研究による候補食因子の有効性の確認:PS Tokushima遺伝子多型の野生型ホモ接合体であることを確認した女子大学生12名を対象として、クロスオーバー法にて早朝空腹時に高脂肪食または高炭水化物食を摂取させ、摂取前、摂取後2.5時間、5.5時間の血中総PS抗原量、総PS活性、身体・血液指標を評価した。現在データ解析中である。 3. 候補食因子による肝細胞のPS発現調節のメカニズム解明:ヒト肝細胞株HepG2の培養液中への植物エストロゲン添加によるPS遺伝子発現への影響について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.若年女性の遺伝素因の検討と血中PS活性に影響をおよぼす候補食因子の探索:ヘルスチェックを受診した女子大学生231名についてPS Tokushima遺伝子多型の遺伝子型を検討したところ5名(2.2%)がヘテロ接合体であり過去の報告と同様あることを確認した。次に、妊娠や経口避妊薬服用をしていないヘテロ接合体9名と野生型ホモ接合体130名について、申請者らが開発した測定系(Tsuda T.et al. 2012)を用いて血中総PS活性、総PS抗原量、PS比活性を検討した結果、高い感度、特異度でPS Tokushima変異を同定することを明らかにし、英文論文として報告した(Noguchi K.et al. 2019)。2019年度ヘルスチェック受診の女子大学生のうちPS Tokushima変異アレルを保有しない176名の血中総PS抗原量はアポC-Ⅱ、LDLコレステロール、HbA1cと強く正に相関し、我々の過去の報告(Otsuka Y. et al. 2018)を再現することを確認した。しかし、食品群別摂取頻度法により評価したエネルギー、栄養素、食品群のいずれの摂取量も血中総PS抗原量と関連せず、LDLコレステロール、HbA1cなどとも関連しなかったことから、若年女性は食事摂取量が少なく、血中PS濃度に関連する食事因子同定が困難であることが示唆された。 2.介入研究による候補食因子の有効性の確認:PS Tokushima変異アレルを保有しない女子大学生12名を対象として、高脂肪食と高炭水化物食による介入実験を実施し、食前と食後の血中総PS抗原量、総PS活性および血中脂質糖質代謝指標との関連を解析中である。 3.候補食因子による肝細胞のPS発現調節のメカニズム解明:ヒト肝細胞株HepG2の培養液中への植物エストロゲン添加によるPS遺伝子発現抑制について、発現調節機序を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 若年女性の遺伝素因の検討と血中PS活性に影響をおよぼす候補食因子の探索:2019年度の解析では、エネルギー、栄養素、食品群のいずれの摂取量も血中PS抗原量のみならずLDLコレステロール、HbA1cとも関連しなかった。したがって、自己申告に基づく食品群別摂取頻度法による摂取量評価では、血中PS抗原量に影響をおよぼす食因子の同定は困難であることが示唆された。 2. 介入研究による候補食因子の有効性の確認:2019年度に実施した若年日本人女性を対象とした介入研究のデータを統計解析することにより、高脂肪食ないし高炭水化物食摂取が血中PS抗原量、血中脂質糖質代謝指標に及ぼす影響を解析し、相互の関連を明らかにする予定である。 3. 候補食因子による肝細胞のPS発現調節のメカニズム解明:培養液中のグルコース濃度低下および植物エストロゲン添加によるによるヒト肝細胞株HepG2のPS遺伝子発現抑制の調節機序を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は当初の交付予定額100万円とほぼ同額を執行したため、約77万円を2020年度に繰り越している。したがって、2020年度の直接経費は約177万円となる。支出の内訳としては、データ解析のための環境整備にともなう物品費70万円、旅費40万円、論文投稿費30万円、その他約30万円を計上している。
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