研究実績の概要 |
2023年度は テーマ2「介入研究による候補食因子の有効性の確認」の研究成果を英文論文として公表した。Protein S Tokushimaの変異アレルを有しない女子大学生12名を対象として、早朝空腹時に約700 kcalの高脂肪食または高炭水化物食を摂取させた。高脂肪食摂取後に血中トリグリセリド、small dense LDLコレステロール、Ⅶ因子活性が著明に上昇したが、総プロテインS抗原量と活性、遊離型プロテインS抗原量、プロテインC抗原量、フィブリノーゲンは変化しなかった。一方、高炭水化物食摂取後には総プロテインS抗原量、アポC-Ⅱ以外はすべて低下した。空腹時、食事摂取後のいずれでも、血中トリグリセリドは血液凝固・凝固制御因子とは関連しなかった。したがって、高脂肪食摂取後の血液凝固能亢進の制御にプロテインC血液凝固制御系は関与しないことが示唆された。 研究期間全体の研究成果としては、テーマ1「若年女性の遺伝素因の検討と血中PS活性に影響をおよぼす候補食因子の探索」では、Protein S Tokushimaの変異アレルを有しない女子大学生176名を対象とした検討で、空腹時の血中総プロテインS抗原量がアポC-Ⅱ、LDLコレステロール、HbA1cと強く正に相関することを確認した。日本、韓国、シンガポール、ハンガリー、ブラジルの健常者1,789名、静脈血栓塞栓症患者1,061名の遺伝子解析により、Protein S Tokushima変異は日本人固有の遺伝性血栓性素因であることを明らかにし、英文論文として公表した。 テーマ3 「候補食因子による肝細胞のPS発現調節のメカニズム解明」では、ヒト肝細胞株の培養液中のグルコース濃度を低下させるとプロテインS、アポC-Ⅱ遺伝子発現が有意に抑制されるが、プロテインC、Ⅶ因子の遺伝子発現が変化しないことを明らかにし、論文を作成中である。
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