研究課題
アルツハイマー病(AD)においてはアミロイド(Aβ)はAD発病前から大脳および皮質脳血管に蓄積し、神経原線維変化(neurofibrillary tangle)などタウ病理が出現し、神経細胞死とともに臨床的には認知症が出現し、増悪することが、従来の臨床病理学研究や常染色体遺伝性アルツハイマー病のDIAN研究(Bateman R et al. NEJM 2012)で明らかになっている。また、血管アミロイドが関与する脳アミロイドアンギオパチー関連炎症(CAA-I)はステロイド治療に反応性し、脳血管にAβが沈着すること、発病期に脳脊髄液(CSF)Aβ1-42、Aβ1-40が低下することを明らかにした(Ikeda M et al. Amyloid 2012)。プレセニリン1(PS1)遺伝子変異を有する7名のAD症例についてCSFの経時的検討を行い、持続的にAβ1-42、Aβ1-40が低下する一方、リン酸化タウが持続的に高値を示すが、上昇はみられないことを報告した(Ikeda M et al. Amyloid 2013)。進行進行性失語(primary progressive aphasia)を呈する病型群では、logopenic variant progressive aphasia (lvPPA)は、非流暢性失文法型失語(naPPA)や意味性認知症(svPPA)に比して、CSFのAβ1-42低下、リン酸化タウの増加を認め、分子PET脳画像(アミロイド11C PiB-PET)で陽性所見を認めることを論文発表した(Ikeda M et al. Amyloid 2014)。これらの研究実績を基に、AD、CAAなどの認知症疾患の分子病態や発病機序を解明することが研究目的である。
2: おおむね順調に進展している
アルツハイマー病(AD)にみられる脳アミロイドアンギオパチー(CAA)における脳微小出血(cerebral microbleeds: CMBs)は、ADの臨床病型のCSFや分子脳画像11C PiB-PET、アポリポプロテインE遺伝子(APOE)多型に関連があると考えられ、検討を進めた。その結果、lvPPAの臨床病型を呈するADでは、他のAD病型(早期発症記憶障害型[EOAD]、後期発症記憶障害型[LOAD]、後部脳萎縮型[PCA])に比べ、大脳皮質にみられるCMBsの数は多く、特に左側に多いことが明らかになった(英文誌投稿、改訂中)。また、CAAの一型と考えられる皮質脳表ヘモジデリン沈着(cSS)の多発性病変を呈したAD症例は、APOEεアレル多型を有し、再発性脳内出血を認め、特異な脂質代謝異常を認めた(英文誌投稿、改訂中)。11C PiB-PETを用い、大脳皮質でのPiB信号変化と大脳白質虚血性変化について検討し、APOE 3ホモ接合AD患者群では、 11C PiB-PET 陽性患者は陰性患者に比べ,高度の血管周囲腔拡大、PVH、DSWMHを有する患者において頻度が高いことを論文発表した(Kasahara H, Ikeda M,,Ikeda Y. J Alzheimer Dis 2019)。
CAAのCMBやcSSにみられるAD症例のCSF各種分子種について検討を進め、これらの病的意義についてまとめ、論文投稿準備中である。同時に現在改訂中の上記論文を完成する。
研究課題遂行にあたり、実験に用いる試薬購入費等を繰り上げて行う必要があったため。
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